月陰の輝き
11
ゼルゲンに入ると、外から見た以上に大きな都市であることがわかった。至る所には露店や屋台があり、人の賑わいに溢れていた。商業都市の名の通り様々な種類の商店が雑多に並んでいる。
店に売られている沢山の初めて見るものに興味を引かれたが、残念なことに美月を乗せた馬車はどんどんと進む。周りの騎士達が早く進めといわんばかりの目で見ているのを感じ、俺もまた馬車の後に続いた。
一際商店の並ぶ大通りを抜け、住宅街に移った。立派な建物が多く、高級住宅街のようだ。そうして着いた目的地は、他とは格別に立派で大きな屋敷だった。
敷地内に入り、馬車が止まる。そこから美月や王子、セーファスらが降りてきた。すると、屋敷の中から出てきたであろう、しっかりとした身なりの小太りの男性が出迎えた。彼は美月や王子にひざまずき頭を垂れる。王子が何かを言い、そうしてから彼は立ち上がり美月たちを屋敷に導こうとした。
しかし、美月が立ち止まり何かを訴えた。周りの人達が困ったようにしていたが、さらに美月が言い募るので観念したように承諾したようだ。美月は全身で喜びを表し、俺の方を振り向いた。
「って、え、何?」
「兄貴ー! 兄貴も一緒に行くよね!?」
美月は喜色満面で俺に問いかける。が、俺には何のことだかさっぱりだ。
待ちきれないとばかりに美月はこっちに駆け寄ってきた。周りの人達の慌てた様子が対照的で面白い、なんて思ってしまう。
「どういうことだ?」
美月が興奮した様子で喋りだそうとするのを遮って疑問を口にした。
「今から街の観光に行く事になったんだ! 兄貴も見ただろ? すっごい数のお店!」
「あぁ、凄かったよなぁ!珍しいものだらけで……!」
この美月の知らせは、俺にとっても心躍るものだった。時間が取れたら見物しに行きたいと思っていたけれど、この状況じゃ半ば無理だろうと諦めていたからだ。
「だろ!? 早く行こうよ!」
「でも今からで本当に大丈夫なのか? もう暗くなり始めているけど」
「私達がしっかり護衛しますので大丈夫ですよ」
「まぁ、一応目立たねぇように頼むぞ?」
その言葉と共に、美月の後ろからライナスとアルベルトがやってきた。
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