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月陰の輝き
8

さて、今俺は王都への道のりを歩いている。
歩いて行くことを決めた時、美月には「一緒に馬車に乗ろうよ」と強く言われたが、それには適当に理由をつけて納得させた。それでも「じゃあ自分も歩く!」と言うので、それを騎士隊全員で止めたのだ。俺を心配してくれるのは分かるが、さすがに美月は歩かせられないよなぁ。
余談だが、美月が言い出した時の王子の俺を見る目は、更に怒りか嫉妬か知らないが激しく燃え上がっていた。目力凄ぇよあいつ……。

また、心配していた差別に関しては今の所、特に問題は起きていない。
さすが王宮騎士隊というべきか。最初に、俺が神子の兄で異世界から来たという事も含め挨拶をした時には、彼らはそういった差別があることを微塵にも感じさせなかった。皆丁寧に挨拶を返してくれたが、彼らと俺の間に壁があるのは明白に感じる。
まぁ、それは当然と言えば当然なんだけど。見ず知らずの人間(しかも異世界の)に対して、人はそんなものだろう。ただ、そこに差別のことがあるのかないのか計り知れないが。

これが美月だったらまた違ったんだろうと思う。神子であるとかないとか以前に、美月は人の懐に自然と入り込むのが上手い。持ち前の天真爛漫さで、この状況でも彼らとあっという間に仲良くなるだろう。俺は、彼らが心の底で思っているかもしれないことをつい気にしてしまう。

「ユウキさん? どうかしましたか?」

ぼーっとしていたためか、騎士隊の一人に声をかけられた。栗色の髪に少し猫目で少年のような顔立ちだ。

「あぁ、何でもないです」

「そうですか。疲れたらいつでも言って下さいね」

純粋に心配されているのか、言外に足手まといだと言われているのか。なんて、考えすぎか。何もかも疑ってかかるのは駄目だよな。

「体力には自信があるんです。大丈夫ですよ」

「そうですか」

出来るだけ愛想よく答えたが、会話終了なのか、その騎士はさりげなく離れていった。一瞬観察するように猫目を開いてじろりと見られたが、まぁそんなものだろう。


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