月陰の輝き 4 「初めまして、セーファスと申します」 声をかけてきたのは王子の従者らしき男性だった。背が高く、長めの水色の髪を後ろでくくっていて、全体的に涼しげな印象だ。 「こちらこそ。佐藤悠紀です。よろしくお願いします」 「敬語でなくて結構ですよ。一応、神子様の兄君なのでしょう?」 微笑みで対応されたが、「一応」の所が強調されていたのが気になった。 「じゃあ遠慮なく。失礼だが、セーファスさんは何をやっている方で?」 「あぁ、私はランドルフ王子の世話係を長年やらせて頂いています」 「世話係を?」 それは、大変そうだな。と思ったが言わない方がいいだろう。 「えぇ、私にとっては弟のような思いです。ですので、あまり不信な人物は側に近づかせたくない」 相変わらず微笑みのままだが、今度はしっかり言葉に棘を含ませてきた。やっぱり俺は信用ならないか。 俺を見据えたままセーファスは続けた。 「何か不信な行動をなさったなら、このセーファスが成敗致します」 潔く言い放つ。その武士のような物言いには、確かに王子の事を大切に思っている事が伺えた。 この言葉から、俺はセーファスには良い印象を持った。もしかしたら俺と似た所があるからかもしれない。俺も、もし美月が酷い目にあうなら、それが例え王子であっても何をするか分からないだろう。 「何もしないさ。けどそれは、お互い様だ」 「……いいでしょう。とりあえずは、よろしくお願いします」 セーファスは一瞬挑戦的に笑ったが、すぐに微笑みに戻った。そうして俺達は握手をしてから、セーファスは外に出ていった。 「ブラコンの闘いかよ」 アルベルトがうんざりとした表情で言った。 「アルベルト。ブラコンというか、俺はただ弟思いなだけだ」 「それを世間じゃブラコンって言うんだよ。覚えとけ」 「……そうなのか?いや、でも俺は」 「そんなことより、ほら」 俺の言葉を遮って、アルベルトは俺の目の前に何かを突き付けた。その手にはランチボックスのような物を持っている。その中にはサンドイッチが見える。 「さっさと食っとけ!」 「ありがとう。わざわざ悪いな」 本当に用意してくれていたのか。正直お腹が鳴りそうな程減っていたので嬉しい。 [*前へ][次へ#] [戻る] |