月陰の輝き
1
「う……」
悠紀は閉じられていた目を開けた。
頭がガンガンする。俺は何をしていたんだっけ?
身体を起こそうとしたら、かすかな鈍痛を全身に感じた。例えるならば、長い間眠っていて久しぶりに身体を動かしたような微妙な痛さだ。
「いてて……」
今度はゆっくり身体を起こした。
ここはどこだろう?
周りを見回すと、木、木、木。どうやら森の中のようだ。心地好い風が吹き、草木の臭い、小鳥のさえずる声が聞こえる。たぶんここはマイナスイオンの宝庫だ。
次になぜこんな所にいるのかを考えた。
たしか俺は家にいたはずだ。いつも通り家事をこなして、そして美月が帰って来て………そうだ!
池の中になぜか美月が吸い込まれていて、俺はそれを助けようとしたんだ。それで、俺も引っ張りこまれた。
頭に疾風の危機迫る吠え声が蘇る。美月の手を握った感触を思い出す。
美月を探さなければ!
しかしどこへ向かえば良いのだろう?
走り出してしまいそうな焦燥感を抑え、よく考えてみる。俺と一緒にここへ来たのならば近くにいると思うのだが。この際どうやってここへ来たのかは考えないようにした。頭がキャパオーバーだと訴えている。
辺りをもう一度見回してみる。すると遠くの方に淡い光が見えた。
「あれは……!」
なんと表現すれば良いのかわからない不思議な色。あの光には見覚えがある!
美月が吸い込まれていた池もあのように光っていたのだ。
今度こそ俺は走り出した。
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