月陰の輝き
18
この世界に来て初めての町だ。町の名前はオルカというらしい。第一印象は、勝手なイメージだが全体的に中世ヨーロッパの雰囲気だ。
レンガ作りの家が建ち、遠くに広大な畑や果樹園がある。町の中心であろう広場はそれなりに賑わっていて商店や宿屋が何軒かあった。商店には見たことのない野菜や果物が売られていて少し興味が湧いた。
通りすがる人々は、それぞれ色とりどりの髪色が鮮やかだ。服装や持ち物、町の雰囲気から、農作業に従事している人が多そうだ。異世界だからといっても人々の暮らしぶりはそう変わらないようで安心した。
興味津々であちこちを見ていると急に頭を叩かれた。
「ほら、キョロキョロしてんな。あそこが癒院だ」
アルベルトが指差した先には、尖頭形の屋根の教会のような建物があった。
俺達はその癒院の近くまでやってきた。建物の入口の側に看板が立っている。そこには見たことのない文字が並んでいた。アルファベットに近いようにも思える。しかし俺の知っている文字は一つもなかった。
「……なぁ、これ何て書いてあるんだ?」
「"癒院"じゃねぇか。もしかして読めないのか?」
「あぁ、そうみたいだ」
「お前、話せるくせに字は読めねぇのか」
俺自身も驚いている。しかしアルベルト達が話している言葉が日本語とは違うようなのだから当然といえば当然か。……俺は異世界にいるのだ。
行くぞ、と言ってアルベルトは先に中に入っていった。ようやく美月の所に着いたのだ。美月の容態が心配だし色々話したいこともある。
俺はアルベルトに続き、中に入った。
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