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月陰の輝き
1


悠紀は目の前で起きている現象を信じることができなかった。


飼い犬の異様な吠え声に気づき、庭の様子を見に来たところである。
そこで見たものは、庭にある観賞用の池の中へ弟の美月が吸い込まれている姿だった。
その池の水面は不思議な色に輝いており、美月の周辺こそ渦巻きのように揺れているがそれ以外は何も起きていないように妙に静かである。

いやいやいや色々ありえないだろ!!しかも水深30pくらいだったはずだぞ!!?


などと戸惑っている場合ではなかった。美月がどんどんと池の中へと沈んでいくのだ。
俺は慌てて美月の手を取り、引き上げようとした。

「兄貴…! 助けて!!」

美月は涙目になりながら、必死に俺の手を掴んだ。
引っ張りあげようと踏ん張ったが、いかんせん美月が俺の手を掴む力が強すぎて俺まで引きずられて池に足を踏み入れてしまった。


……そこからはあれよあれよと引っ張られる感覚に襲われていく。

意識が遠のいていく中で、我が家の愛犬・疾風の吠える声が響いていた。

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あきゅろす。
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