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気になる

「柳くんのコースすごい的確やなあ」
「お前のフォームはクセがなくてきれいだな」
柳と白石は試合後の挨拶をすませ、心配があるのと次のコートが近いこともあり、忍足と海里が試合しているコートへ足を向ける。

「ほんま?海里ちゃんにもそれ褒められたからなんや照れくさいわ」
人懐っこい笑みを向ける白石は確かに照れてはいるが、それよりも喜んでいることが全身から柳に伝わる。
それに柳はなぜかもやもやとした感情が湧き上がる気がした。

「…。と、ここだ」
「あ!ほんまや!スコアは…」
感情を押し込め、柳は足を止める。
つられて白石も足を止め、フェンスに手をつき、乗り出すようにコート内に目を向ける。
スコアを気にしつつも、まさか海里が負けるわけがないという安心感が二人にはあった。
すぐに二人共海里へ視線を向け、息が上がっていないことや顔色が悪くないことを確認し、ひとまず安堵する。

しかし、コート内の空気が想像と違うことに柳は気づく。
(忍足だけ息が上がりすぎではないか…?)

「柳たちも終わったのか?」
疑問を感じてすぐに、少し離れた場所にいたのか、丸井が小走りに柳たちに駆け寄った。

「あぁ」
「もしかして初戦はいた…」
「そないなわけないやろ」
「まぁ、だよな」
軽い会話をかわしつつも、全員は海里を目で追っている。
どうやら、丸井の様子からすると丸井たちも勝利を収めたことを察することができる。
柳と白石はいじりがいのありそうな丸井の一発芸や暴露話が聞けないことに内心で少し残念がった。

「で、海里の試合はどうだ?」
「…あー…海里たちから2-4」
不穏なコート内の空気を感じつつも、問いかけると、丸井は言いづらそうに答えた。
柳だけはなんとなく感じていたため控えめにだが、二人は驚いた表情を見せる。

「え!?海里ちゃんたち負けとるん?!謙也はなにやっとるんや!」
「それがな…しょうがないんだろうけど、全部スイッチして海里は完全な前衛専門で、相手は二年生だし、スピードのあるロブで忍足が相当ふられてて、体力が、な…」
「そんな……」
同情も含まれた丸井の声に、白石は自らの中でまるでヒーローのように思っていた海里の敗退の危機になんとも言えぬ感情が沸く。
しかし、彼女の身体がなによりも心配で、内心ではこのまま1試合で終わってくれれば…と考えてしまう自分もいて自己嫌悪した。

「正直負けて欲しくねえ。海里はびっくりするくらい前衛として決め球は完璧に決めてるし。だからって忍足を責めるつもりもなくて、これはさすがに可哀そうだとも思う。」
丸井が言うとおり、コート内の四人のレベルは誰が見ても歴然だった。
しかも、相方である海里の強さは、初日の試合でこの合宿に参加しているものは誰もが知っている。
自分だったら逃げ出したいと思う者がいてもおかしくなかった。

「だけど、体のこととか全部なしにしても、俺、負けて欲しいってちょっと思っちまった」
丸井の言葉に二人はキョトンと目を丸め、思わずずっと目で追っていた彼女から目を離した。

「海里の暴露話、ちょっと聞きたい」

なんて素直なやつだ、そう白石は丸井の横顔をみて思った…



TLDR


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