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ペア発表

「集合」
部長の掛け声で、疲れた体にムチを打ち、駆け足で部員たちが集まってくる。
「今日の練習メニュー最後のダブルスを発表する」
その言葉に、疲れていた周りの表情は明るくなり、小さくざわめく。
ひたすら体力勝負の練習よりもペアの相方との試合形式というのは、幾分も楽しさが増すからそのざわめきにも納得できた。それに、相方が誰になるのかわからないため、発表されるのはわくわくする。発表する側の私も、みんなの反応が楽しみだ。
しかし、そのざわめきも部長たちの「静かにするように」という視線で制された。
静かになったのを確かめると、部長たちは両校のミックスされたダブルスのペアを発表していく。
私はペアを決める話し合いに参加しているため、大体は頭に入っているので、みんなの反応をただ楽しむことにした。

「立海1年柳・四天宝寺1年白石。立海1年丸井ブン太…」
次々に仲良くしているメンバーも呼ばれていき、なぜかみんなの表情が暗くなっていく。

「おい…ほとんど立海と四天混ぜてあるってことはもともと俺らに望みってなかったんじゃ……」
「そんなことないよ。俺はまだ呼ばれていない」
「いや、海里と幸村くんはありえないって。強すぎちゃうだろぃ」

もっと楽しんでくれると思っていたのに、いつも一緒にいるメンバーはなんとなく他の部員に比べて反応が薄いことを少しだけ残念に思っていたら、ついに精市のペアも呼ばれた。

「なぜだ……っ」
「いやわかってただろ!」

あと、残るは…
「最後、立海#name_1##ちゃんと四天宝寺忍足」
言い終わる前に周りがまた少しざわめく。
そんななか、私は小さく忍足謙也に手を振った。忍足謙也は相当驚いているようでキョトンとしている。

「謙也、マネちゃんの分お前が走るんやからな!」
「え、あ、はい!」
四天宝寺の部長さんに言われ、ハッとしたように返事をする彼は背筋を伸ばしつつもまだ驚いているようだ。

今回部長たちと満場一致で忍足謙也と私は組むことになった。理由としては、足が速く、現在体力もそれなりにあって、この先体力も技術も伸び代がありそうだったから。
つまりは…まぁ、私は彼を後衛とし鍛えるためにあくまで決めるところだけを決める役割だ。あと、忍足謙也は自分の何かが悪いことに気づいていても何が悪いのかに気づきにくいため、そこの助言も、と四天宝寺の部長さんに頼まれた。

「えー団体戦は最終日にやるため、今日は個人のトーナメント戦とする。なお、一回戦負けしたメンバーは最後に……」
「一発芸か恥ずかしい暴露話でもやってもらおうか」

「!?」
部長ふたりの言葉に驚いたのは周りの部員だけではない。……私もだ。

「えっ」
「あと、優勝者はそうやな……卯月ちゃんからのきっs」
「却下だ」
楽しそうに優勝者への景品を考える四天宝寺の部長さんに声を張り上げたのはうちの部長だ。こういった時に年上らしさや、先輩として悪ふざけからも守ってくれているのを改めて感じる。部長は本当にいい人だ。

「えー女の子おるんやからー」
「却下だ却下。優勝者はこの合宿中の食事で優先的におかわりができる権利を。」
うなだれる四天宝寺の部長さんに対し、うちの部長はきっぱりと言い放つ。

しかし……
「えーせっかくやしマネージャーちゃんからなんか欲しいわ〜」
あたりから四天宝寺の部長のおふざけに便乗した声が上がった。

みんなたいしてして欲しくもないくせに!うちの部長をからかうために!!
と、内心呟きながらも少し考え込む。

どうしよう…
なにか…なにか仕返しになりそうなものでかつここを収める方法は…



「はい!では、優勝したペアのためにわたくし卯月海里、絶対に強くなる特別メニューを考えさせていただきます!」「よーし、おかわりの権利目指して頑張るでー!」
私が怖いと思う時の精市を思い浮かべながらにっこりと笑顔で言うと、周りはリズムが良すぎるくらいにすぐ切り替えをみせた。
それに(さすが大阪…)と思わずにはいられなくて笑ってしまった。

こうしたちょっとした笑いが自分から出ることに、幸せを感じつつも、胸が、ちくりと痛んだ。



(優斗、ごめん、ね。)TLDR

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あきゅろす。
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