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慈郎編13


あれから、3日が過ぎた。
そして、4日目の今日も、彼女は学校に来ていない。

彼女のうわさ話を耳にしても、誰一人として容態を知らなくて。
アトベに至っては学校を休んだり早退をしていて、いる時に近づこうとしてみたものの、僕を避けて行動しているらしく、うまく捕まらなかった。

彼女のことが気になって落ち着けず、がっくんといても笑う事なんてできなくて。
大好きだった眠る時間でさえも最近では取れなくなっていた。


「海里ちゃんに、あいたい」

ポツリと、誰もいない教室で呟くけれど、それがあまりにもむなしかった。

まるで、彼女が幻だったのではないかと思ってしまうような、『戻った』日常。
ずっとその中で過ごしてきたのに、今は苦しくて仕方がなかった。
せめて、なんでも、良い。だれか、今の彼女の事を教えて。
そう、ただただ願う日々。
あの少年は大丈夫だと言っていたけども、こんな状態じゃ、嫌な方向に彼女が想像されてしまった。
そしてそんな自分がもっと嫌いになってしまう。

「どうしたら、いいのさ…」

彼女の家へ向かおうと考えたりもした。
だけど、教室で彼女に話しかけたあの日、アトベの言っていた意味が、今では分かるから。
だから、これ以上彼女を苦しめてしまうかと思うと、足が動かなくなった。

あいたい。
彼女の、あの笑顔が、みたい。

だけど、あんな事をしてしまったから。
あんな事をしたのに、願うなんて、おかしいから。

だから、

彼女が僕に会いたくないのなら
彼女が僕に容態を伝えたくないのなら

それでも良い。

だけど、お願いだから。
一言だけで良いんだ。伝えさせて。

「…ごめん、なさいっ」

泣きすぎたせいで、目じりが痛くて。
痛みをそうやって感じるたびに、彼女が必死に僕に逃げろといった光景が、彼女が倒れた光景が、ぐったりとした光景が、よみがえる。
力がほしい。権力がほしい。彼女を守るだけの。彼女の、隣にいられるだけの。
こんなこと、初めて望んだ。

でも、なにより…

何を無くしたっていいから。
だから、…彼女に、嫌われたく、ない。

「っひ…っく」

ごめんなさい。わがままで。
ごめんなさい。強欲で。

ごめん…
ごめんなさい…


涙は、枯れる事を、知らない。



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あきゅろす。
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