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求めていたもの

「只今帰りましたー!」

食堂に氷を持って行くと、丁度ランニングが終わったようで全員がわらわらと席に着こうとしているところだった。
その人混みの中私の姿を見つけると両校の部長が駆け寄ってきてくれる。

「おおきに…って!なんで氷全部持ってるんや!?」

「え?」
向こうの部長さんの言葉がよく分からなくて、私は首を傾げた。

「オサムちゃん向かわせたやろ?!」

その言葉に、あぁ、と私は理解する。

「渡邊先生、ちゃんと車で迎えに来てくれましたよ」
『先輩達が頼んでくださったのですよね』と、私は感謝の気持ちを笑顔で表す。

「いや、それは全然ええんやけど…
オサムちゃん、なんでここまで荷物持ってこないんや…?」

「あぁ、なんか車降りた瞬間に知らない先生に『そろそろ借金返せー!』って、連れて行かれちゃいました…」

「…」
目を遠くしたむこうの部長さんは無言で私に頭を下げた…

「え、全然大丈夫ですよ!?
ここまで送ってもらえただけで、本当に助かりました!!」
そんなその人の頭を上げさせるように、私は焦りながら言葉を並べる

「それに元々こうゆうのはマネージャーの仕事ですから!
こちらこそ、この度はこんな単純なミスをしてしまい申し訳ございませんでした。」
そう言って、私は両校部長に向かって頭を下げた。
すると、四天宝寺の部長さんは目をまん丸にして私を見て。
それから、うちの部長に首だけ向き直った。

「この子を俺等に下さい!」
「やるかアホ!!」

「ちょぉ!どっちが関西人かわからななっとる!」
いつの間にやら仲良くなっている両校の部長…
なんだかそれがすごく微笑ましく見えた。

そんな光景に勝手に微笑んでしまう表情を向けていたら、
「あ…」
不意に両手が軽くなった…

それに驚いて振り向いてみると、
「海里、買い出し行くんだったら声掛けてっていってるだろ?」
そこにはむくれた精市がいた。

「え、あ、だってみんなランニングがあったし…」

「これを持ってコンビニ行って帰ってくる方が練習になるんじゃない?
持ってるの氷だし、溶かさないようにしないと…って責任重大だし」
その言葉に、「あー…」と私は返事に困った。
確かにそうだからだ。
けれども、私はそれに気付いていなかったわけではない。

私にとって『練習』というのはただ身体を鍛えるための物ではなくて。
確かにそれも大切だけれども、やっぱり一番は、こうして『部活』として合宿に来ているほどだ…
本番の時のためにすこしでも、『協力』『支え合い』ができる、仲間に対してそうゆう想いを持てるようにするための『信頼』を築く場だと思ってる。
近くに控えた『団体戦』は、自分の意地との戦いなんかじゃ絶対になくて、『このメンバーで』『勝ちたい』『負けたくない』そうゆう思いでの戦いだ。
だからこそ、こうやって少しでもこの部内での時間を多くしている…。

つまりは…そうゆうわけで。
だから断った雅治だけじゃなく、みんなには言わなかったりした。

でも、それを言うのはなんだか嫌で。
というか、言ってしまったらそれは『作られた』ものになってしまうから…

そんな私の思いは幸か不幸かみんなには届かずに。
どうやら勘違いされてしまったようだ。

「海里はそうやって、いっつも自分ひとりでやろうとする」
そうポツリ、聞こえて精市の表情に視線を向けると、少し、拗ねたように言っていた。
でも、それはすぐに優しい笑顔になって。

「ありがとう」

そう告げられたかと思うと、私の持っていた氷を顔の横に出して、ブン太や、真田君、柳君に柳生君、雅治に、ジャッカル君も、私に同じ言葉をかけた。
そして、それに驚いているとまわりから四天宝寺、立海関係なく全員からその言葉がまたかけられる。

「あ…う…」

マネージャーが、選手のために働くのは、当たり前のこと。
なの、に
暖か、すぎて。
なんだか気恥ずかしくて。

そんな私に向けられた笑顔はだんだんと、ニヤついたものになっていく

「海里照れてる?」
精市がいっそう楽しそうに言うものだから、思わず顔まで赤くなっちゃって。
「別に…」そう精市だけに言って、私は軽くうつむきながら全員に聞こえるように声を発する。

「どう、いたしまして!
冷たい氷買ってきたからには、みなさん、私が考えたメニュー、頑張ってくださいね!!」

だんだんと、言っているうちに顔を上げることが出来た。
そして、笑顔でみんなに伝えることができ、私は言い終わると同時に満足げな笑顔にいっそうなった。


私が、求めていたものが、ここにある。
執事にメイドにSPに。
お礼を言って、

「仕事ですので」


そんな言葉を求めていたわけじゃない。
私は、こうやって、お礼を言い合いたかったんだ…。

目と目を合わせて、してくれる人みんなに「ありがとう」を伝えて、してあげれたら同じように「ありがとう」をもらう。

…胸には、確かに悲しみという名の暗黒があるのに。
どうしよう…

私、幸せだ…。

何度も何度も噛み締めるそれに、私はアイツに感謝をするんだ。
今、ここに私をいさせてくれる、アイツに。

「おうよ!」
等と、周りから笑い声と共に飛んでくる。
それがまた幸せで。
身近にいた精市と顔を見合わせて、いつものメンバーと顔を見合わせて、また、笑いあった。
目の端では、驚きながらも、あまりに優しい笑顔で忍足謙也がこちらを見つめていて。

その瞳は「よかったな」と告げていることがよく、伝わってきた…。




数十分後、初めて私のメニューをこなす者、そうでない者からも「おにいいいい!!」と叫ばれたのは、まぁ、言わずとも、知れる?よね。



「ほんまに、マネちゃんくれへ「やらん!」
TLDR


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あきゅろす。
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