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Deadline49


約束の、日。

まだ薄暗い朝。
目を覚ます、と目の前には愛しい人。

あぁ、なんて幸せなのだろう。

そう、小さく内心で呟き、私はその幼い寝顔に笑みをこぼし、頬にキスを一つ落とした。

「少し、行って来るね」

そう本当に小さく告げて、私はその暖かなベットを後にした。






私立だから、と少し心配していたが…案外簡単に入る事が出来た。
私が来たところ、そこは彼と多くを過ごした学校だった…

さらに迷わず足を進めるは、…テニス部の部室。

私は何も関係のないところ…の、はずなのだが学校の中でも彼との多くはここで過ごした。
ドアノブに手をかけると、なぜだか、開いていた。

これは、『最後の日』である私へのプレゼントか、と私は困ったように小さく笑いをこぼす。
そうしてから、そっとそこへ足を踏み入れた。


見慣れた…でも、どこか懐かしいそこ…。
そして、なぜだか、とても寂しい。

あぁ、そっか。
誰も…幸村君が、いないからだ…。
ここに来るときは誰かかしらがここにいたから…。

そんなことを思いながらも、私は足をすすめ、その足を幸村君のロッカーの前で止めた。
ジッと、そこを目に焼き付けるように見つめてから、私はポケットから一つの鍵を取り出す。
いつだったか…某テニス部員達のロッカーからいかがわしい本が取り出された場面に居合わせてしまった私に幸村君がくれたものだ。



「幸村君だって、男だからこれくらい持ってるって!」

「そう、なの…?」

「変な事言わないででくれるかな。
海里も疑わないの。俺が興味あるのは海里だけだよ」

「…っ!
で、でも、」

「信用ないな…。
じゃぁ…はい」

「え…?」

「俺のロッカーの鍵のスペア。それから靴箱に教室のもあげる。
家だっていきなり来てくれてもかまわない。
どう?…分かってくれる?」

「…」

「海里?」

「あ…。う、うん!
へへ、幸村君、」

「何?」

「だーいすき!」

「だぁああ!ここで惚気るなああああ」



そのときの事を思い出して、クスリ、とまた笑いをこぼす。
あー…私、幸せだったな。なんて、内心で呟きながら。

カチャ

をう音を鳴らせて、そこを開く。
そしてそこに私の香りを振りまいた。

彼が、好きだといってくれた私のコロンの香り。
市販のもので他の人だってもってるもの、だけどきっと、この香りを嗅いだら幸村君は私を連想してくれる。

『彼を悲しませないために、私を彼の中から消す』
から
『少しでも、彼の中に私を…『幸せ』を残したい』
この一ヶ月の間に、目的が変わってしまった私は、こうやって彼の居場所へ私を置いていこうとしていた…。
契約とは違うこれに許される事ではない事を知っていながら。

でも…
『生きている』私に少しでも足掻かせてください。

これによって、彼の未来がどうなるのかは、彼次第。

私は、
貴方を信じているよ…幸村君。




この時の私は、甘えていた。
一般人の私が『契約』なんて出来るわけ…こんなにも、『生』と『死』を自由にすることなんて出来るはずがないのに。
なぜ、気づかなかったのだろう…
ううん、一生…気づく事はないのね。

…ごめん、なさい
ありがとう…っTLDR



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