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慈郎編7

「今日も、来ないかなー」

なんて口にしながら、いつもの場所へ足を進める
と、

「あれ?」
あの子が走っている姿を初めて目にした。
それに彼女は背後をとても気にしてて…

もしかして…
誰かに追われてる…?

僕は慌てて、彼女の腕を茂みの中に引き込んだ。

「わっ」
「シっ」
追われてるんでしょう? そう、目で言って、彼女の口を塞ぐ。

すると、しばらくして茂みの目の前をいつも彼女についてる黒服の人たちが通っていった。

過ぎ去って、しばらく黙って足音が消えるのを待つ。
そして、聞こえなくなったら僕は彼女の口にしていた手を離した。

「行ったみたいだよ」
笑いかける僕に、彼女は戸惑いを見せる。
でも、そんなのは気にせずに僕はポケットからさっき渡し損ねたクッキーを取り出した。

「あのね、僕慈郎っていうんだ!
それでね、これね、今日調理実習で作ったんだ」
はい、と差し出すと彼女はますます戸惑う

それに、一瞬悲しくなって眉をたらす僕。
そんな僕に彼女はわたわたと慌てだす。

「えっと、あの…」
そんな彼女を見ていて、ふいに思う。

あ、そっか
この子、お嬢様だから…

僕はクッキーをひとつとって、一口食べる
そして、その食べかけを彼女に差し出した。

「なんも入ってないよ?
さっきもね食べたけどおなか壊してないから大丈夫」
言うと、彼女はキョトン、としてからその差し出した食べかけを口にする。
そして…

うわ…

思わず熱くなる顔。

「おいしい」
ありがとう、とまた笑う彼女

やっぱり、僕、この笑顔、大好きだ…




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あきゅろす。
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