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慈郎編5


目を覚ますと、なぜか手には
「飴?」
りんご味の飴があった


がっくんかな?と思ったけれど、その日がっくんはおたふくで学校を休んでいたからそれはない。
でも、この場所は僕とがっくんしか知らないはずで…

うーん、と悩みながら僕はその飴を口に含んだ。
甘い味が口いっぱいに広がる。

「おいしい」
ふにゃ、と俺は表情をやわらかく崩す。

他の可能性を探しながら脳裏に浮かんだのは、夢か現実か分からないあの、可愛らしい女の子だった。




今日も景吾はお休み
きっと、理由は今日休んでいるおにいちゃんと同じ理由。

大きなパーティー。
でも、それは取引をスムーズにするためとか、誰かの誕生日とかそうゆう娯楽的なものじゃなくてビジネスのお話が中心のもの。
だから、
私は学校に来ている…

ビジネスの話をするとき、私は邪魔だから…

ギュッと手をきつく握った。


無意識に、私の足はあの大きな木の下へ向いていた。




あの女の子は夢だったのかな…?
そうなのかも、しれない。だって、あんなに可愛い女の子、いるわけないもん。

そう思うのに、内心ではすごく、期待していた。
だから僕は眠ったふりをして、だけが来るのかを待ったんだ。


ガサ、
木を掻き分ける音を耳にして、『きた』と内心で呟く

そして、その人物が僕に近づいたのを感じて、そっと…瞳を薄く開けた

そうしたら…
あまりに予想外な事が、起きた


「今日も、いた…」


そこには、僕が大嫌いな人間。
でも、

なんでだろ

「ひつじ君、」

瞳の色が、違った。


「今日も、気持ちよさそう、だね」
ふんわりと笑った表情
それを見たとたん、僕の胸が大きく脈打つのを感じた。

あの子、だ

夢で見た、あの女の子…


笑顔が完全に一致して、僕は驚きのあまり瞳をちゃんと開いてしまった。

「え、!?」
そんな僕をみて、その子は勢いよく立ち上がると僕に背を向けて駆け出す。
その手を、僕は必死に無意識でつかんでいた

「まって!」

でも、彼女はそれを振りほどこうと、必死でつかまれた手を振り回す。

「まって!ねぇ、何も…」
言いかける僕に、彼女は一度動きを止めて…小さく呼吸をした。
そして、振り向いた、次の瞬間

「っつ」

そこには、僕が大嫌いだといっていたあの『氷のお姫様』
思わず怖くなって背筋を伸ばす。
でも、その瞳の奥には、どこか寂しそうな彼女の姿があった…

あの時見た彼女の表情は見間違いなんかじゃない
本当は分かっていた事だけれど、『彼女が嫌い』だと、自分に言い聞かせて見間違いにしていた…。
そんなことは、分かってた。
でも、あんなに優しく笑う彼女を見たら、もうその呪文は使えなくなっていた…

「今更もう遅いC」
ニッと笑って見せると、彼女は口をへの字にしてだんだんと情けない表情に崩れていく。

「っ、あの、」

「あのね、飴、ありがとう」
そう、まず言いたかった言葉を口にすると、彼女は一瞬キョトン、としてからふんわりと、優しく笑った。
それを見て、僕の心臓はびっくりするくらい早くなる
そして、顔が熱くなるのが分かった

そんな僕は、思わず彼女をつなぎとめていた腕を緩めてしまい、
「あ…」
彼女はそれに気づくとすばやく僕の目の前から消えてしまった…


「まるで…
シンデレラみたい…」

もう誰もいないそこを見つめたまま、僕は小さく呟いた。


大嫌いな女の子
だけど、僕は…


あの笑顔が、すごく好き、だ


彼女を思い出して、思わず顔が緩む。
僕は彼女に触れた右手を大切に握った。




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