慈郎編2
昼休み。僕は友達になったがっくんと食堂に向かった。
「んでさ、だから今日の昼ごはんは…と、」
隣で話していたがっくんが足を止め、周りの人間も足を止める。
一瞬何かと思ったけど、そろそろなれた。…あの子が通るんだ。
一斉に礼をする人の波。
それを僕は冷めた目でみつめる。
と、そんな僕に気づいたのか、がっくんが慌てて僕の頭を片手で無理やり下げた。
その力に、僕はふてくされながら仕方なく従う。
でも、視線だけでその子を追う。
すると…
え、
目が一瞬だけど、あった。
その目は、僕の嫌いな冷たく人を見下した目なんかじゃなくて…
…すごく、寂しそうな、目。
その子が通り過ぎ、周りはまばらに散っていく。
そんな中、僕は唖然とさっきまで彼女が歩いていた所を見つめていた。
「…い!おい!慈郎!聞いてるか!?」
「あっ…うん!」
隣で『行くぞ』と、席を指差しているがっくんの声でわれに返り、僕は笑顔でその後を付いていく。
「ったく、慈郎はボーっとしすぎなんだよ。
気をつけろよ?」
その『気をつけろ』は、ボーっとしてることに対してじゃなくて、頭を下げなかった事に対して。
気づいていてわざとだよ。なんて、『親が、feather系列なんだ』そう、少し悲しく前に言っていたがっくんには言えなかった。
僕は、feather系列じゃなくて、家でやってるクリーニング屋さんだから。
って、安心できるわけじゃあない。featherの力を持ってすれば自分の会社外の事だって、簡単な事だ。
それでも、なんだか気に入らなかった
さっきの目だって、きっとただの見間違い。
そうだよ。僕はあの子が嫌い。
親の金に物を言わせて、好き勝手やって、人を見下しててすごく嫌な子。
僕って、ガキなのかな…。
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