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彼女は、いじめにあっている。
俺が、彼女のことを好きで近づきすぎたばかりに…

小さく、唇を噛みしめる俺。

なんでこうなってしまったんだろう。
どうして、こんなに苦しいんだろう…。

入学してすぐに仲良くなって。
いつも一緒にいて。
相談事もいっぱいして。されて。

…好きになって。

毎日がドキドキでいっぱいで。


でも、
俺がレギュラーになってから周りが変わりだした…。


いつも、コントみたいにふざけあってた俺等なのに、
周りはそれを笑っていたのに、
なんで、こうも変わってしまったのだろう…


ただ俺はあの毎日を繰り返していたいだけだったのに…。

『レギュラーって、そんなに影響力のあるものなの?』

周りの異変に気付き始めた頃
まだ俺は気付くくらいで特に何もしていなくて。
そんな中、俺はそう彼女にポツリと漏らした。

‘レギュラー’になったからといって、人を好きになるものなのだろうか。
態度を変える物なのだろうか。
クラスや学年、‘学校’内のものならまだ分からなくもない…。
でも、これは部活の話だ。ほとんどの人が関係ないのに…。

そういった疑問でいっぱいで。
ため息と同時に次々に出てくるそれ。

すると、彼女は困ったように笑って。

「精市君は元々人気あった上に、うちの学校内で特に強いっていわれてるテニス部で1年生だっていうのにレギュラーとっちゃったから、みんな焦ってるんだよ。」

それから、少し遠くに目をやって。
少しだけ寂しそうに、微笑んだ。

「『レギュラー』ってすごいことだよ。
先輩の重みを、全て背負うってことなんだから」

「重み?」

「そう。
今まで、先輩達はレギュラーになるために、必死に頑張って練習してきたんだよ。
三年生は、二年間の思いがあって、二年生は一年分の。
だけど、精市君はその先輩達の思いの分だけの技術を、入ったばかりで『部活』に対してまだちゃんとした思い入れができてないのに上回ったんだよ。
だから、その分の思いに答える責任がある。」

言葉をそこで止めて、彼女は俺の目を真っ直ぐ見つめた。

「負けちゃ、だめだよ。
放り投げちゃだめだよ。
ちゃんと、…背負ってね。」

真剣なのに、優しすぎる微笑み。
思わず俺はドキリと心臓を跳ねらせた。

そして、初めてちゃんと『レギュラー』の意味を知った
あまりにも軽んじていた俺に、彼女は教えてくれた。
その時、少し前までの自分を思い出して少し…いや、かなり後悔した。

けれども、その意味に気付かせてくれたのが彼女だと思うとすごく優しい気持ちになったんだ。

「…うん。
あーなんかテニスやりたくなってきた!
俺、コート行ってくる!」

「ふふ、もう鐘なるからだめだよ。」

「あ、そっか…。
…じゃぁ、はい。」
そう言って小指を差し出す俺
それに、彼女は瞳をキョトン、と丸くした。

「約束。
俺、部活頑張る。部員全員分の思い、絶対に背負う。」

「頑張りすぎるのも、だめだよ?」

「分かってる。
だから約束。
俺が頑張りすぎた時には、海里が支えて?」

今思えば、下心満載だった言葉。
きっと頬はほのかに赤かったと思う…

そんな俺に、彼女は小さく笑ってから、
「仕方ないな」
そう、自分の小指を差し出した。





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あきゅろす。
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