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Deadline42



「進んでください。少しでも。」



躊躇っていたボタンを押す
すると、そこには一文

『留守電、聞いて』

どこか優しく書かれた文。
私はそのまま留守電のメッセージのボタンに手をやった

ゆっくりと、耳に電話を近づける

『海里、身体は壊してない?』
愛しくてたまらない、優しい声

思わず、呼吸が止まった

『何度もメールと電話、してごめんね。』
重いよね、なんて自嘲する彼にきつく、痛いほどに胸が締め付けられる。


『…。付き合って1年記念日の日、前に言ったけれど例のチケットが取れたんだ。
だから、あの川原で待ってる。』

それが、『最後』なんだと、彼が賭けたのを悟った

それから長めの間が空く
これで通話は終了かと私は切るボタンに手をかけようとした

時、

『少しでも、俺への気持ちが変わっていないのなら来てほしい。』
そう言う声は、すがるようにかすれ、思わず瞳から雫がこぼれてしまうほどだった
声でここまで伝わるほどに、彼を私は…

『海里、』

切られた言葉
かすかに震える息が聞こえる




『好きだ…っ
愛してるんだ…』




「…っ」

今まで、あまりに短い間だけれど彼と一緒にいた
その間に、私はたくさんの彼を見てきた

だけど、

こんな弱々しい彼を、
涙を懸命に我慢する声を、…知らない


「幸、村くん…っ」


どれほど彼が私を想ってくれているか、知っているつもりだった
…つもり、だったんだ。

彼は、これほどまでに愛してくれた。



「こんにちわ」

あの日、私を見つけてくれた


私を、

「頑張れ」

救ってくれた…っ



「幸村くんっ」

 どうしよう

涙が、止まらない

 好き、だよ
 好きなの…っ



「幸村君…!」


止められない


 会いたい
 会いたいよ…お


携帯を強く、強く抱く




「進んでください。少しでも。」



ごめん、なさい
ごめっ


幸村君、ごめん、ね



お願い、許して…っ
無理だよ
我慢なんて出来ない

この気持ちを、
っ止めることなんて出来ないよ…っお


一番恐れていた。

あなたを縛ってしまうこと…。


ごめんなさい…っ

私に、


もっと
もっと

たくさんの



あなたとの想い出を、






幸せを下さい…!










これほどまでに願いの多い貪欲な私は、
汚い人間TLDR


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