[携帯モード] [URL送信]
純言


目覚ましに起こされる、と
昨日の夜よりはいくつかましだった

震える体でベットを下りる
そして、足をつくと昨日の晩のように膝が折りたたまれた
その衝動で私は転びかける

ふいに見た下のベット・・
幸いというか、あの目覚まし音でもルームメイトは起きなかった

それにどこか安堵の息をついて
私はこの体での歩き方に慣れるため、考えながらも足を進めた



多分今日はずっとこの調子だ

だから、今のうちに慣れておかなきゃ・・



「よい、しょ」
力の入れ具合を考えながらやると、案外はやく慣れそう・・

でも
「あっ」
かくんっ、とたまに膝が折れてしまう

私は転ばぬように、ベットに手を掛ける

・・と
「ん・・
!海里!?」
驚いたかのように起きるブン太

目、覚まさしちゃった・・

「ほら、昨日部長に言われて同室になったじゃない」
あはは と笑いながらブン太に向けると、「ああ・・そっか・・!」と思い出した仕草をする

よかった・・
倒れたところは見られてない・・

気付かれないように安堵のため息をついた

「起床より時間あるし、まだ寝てて大丈夫だよ」
そう言うと、まだどこかトロンとした目のブン太はあくびをしながら
「そっか」
と、また布団に戻ろうとする

「って・・海里顔色悪くねぇ?」
気付いたかのように、ブン太が布団に入る手を止めた

「やだな、そんなことないよ」

「そう・・か?
つかなんでさっきからベットの柱に寄っかかってんの?」
不思議そうに私を見上げるブン太

・・もうそろそろ、自分でたてるよね・・

「いや、特に意味はない!
じゃ、私ちょっと飲み物買ってくるね
起こしてごめん!お休み!」
そう言って、私は笑顔で部屋を後にした

背後にはポカンとしたブン太
でも、眠そうだったし・・大丈夫だよね・・?


**

「おーい、しーらーいーしー?」

やっと明るくなってきた空の下
コート近くの机のあるベンチに腰掛けていた白石に忍足は前で手を振る
・・が、その返答はない

「どないしたんや?」

「白石はんにしてはボーとするなんてめずらしいやんな」
白石の隣に座ってた石田も心配そうにその人物を見つめる

白石の反応のなさに、
目を合わせた二人は眉を寄せて首を傾げあう

すると、
「あ、」
ふいに謙也の視線の先に寮の窓が映った

「海里や」

「!」
その言葉にうなだれるようにボーとしていた白石は背筋を伸ばした
そんな彼に気付かず、忍足は目に映った少女に「おーい」と手を振る

するとそれに気付いたのか、その少女も笑いながら手を振り替えした

「・・めっちゃ、かっこええやんな・・」

ポツリ、と呟いた白石に、二人はぴくっと反応した

「『カッコええ』?」
その言葉に眉を寄せる忍足

「ん。昨日自然にな、俺が先輩に怒られへんようにしてくれたんや
そんでな、擦れ違いざまにシャンプーのええ香りがしてん。
振り向いたらワンセットも・・しかも三年生の先輩相手やったのに汗、まったくって言ってええほどかいてへんかったん」
『目で追うと、昔はまったレンジャーもんのテレビ見てる時みたいにドキドキすんねん』と付け足す白石に、二人は まさか・・ と目を合わせる

「白石、それって・・んが!」
謙也が言いかけた瞬間、背後から口をふさがれた

「謙也君、それは本人で気づかな、ダメやろ」
振り向くとIQが高いと言われる金色がいた

「・・そーゆーもん?」
謙也は小声でその人物に耳打ちする

「せや!そうせなつまらん!」

「・・そうゆうことデスカ・・」
アハハ・・と空笑いをする忍足
その横ではボーとした白石がまた口を開く

「なんかな、この気持t・・」
「四天宝寺のみんな!」

「「「!!」」」
明るい声と同時に、俺等は顔を上げる
すると、ここから一番近い窓から身を乗り出している、先ほどまでもう少し先の窓にいた海里の姿

「おはよう
みんな朝早すぎ」
明るい笑顔の彼女

それに忍足はまだ慣れぬように笑いながらも挨拶をすま…
「おは「おはよう!」
そうとすると、立ち上がった白石に被せられた

「・・」

すると、ツンと金色につつかれた忍足
「(…俺かて、やって知れた『海里』と仲良う話したい…)」
そして、チラリと白石を見る

「(しゃーないなぁ)」
仲の良い友人のためだと、謙也は立ち上がる
…その姿を見て、笑顔の金色と石田も立ち上がった

「ほな、またあとで」

笑って手を振ると、行ってしまう三人
その背を海里はみつめる

「あれ…もしかして忙しかった…?」

「いや、全然!」
慌てるように言って、白石は窓からぶら下がっている海里の手を引こうとする…

「っ・・」

が、手を掴もうとして引っ込めた
・・表情は、赤い

「どうかした?」

「い、いや!」
白石は、両手を前に振りながらも何か言わなくてはと考える


「せ、せや!
昨日できひんかった試合せぇへん?」


「あ、い・・」
言いかけて、海里は一度口を閉じる


だからといって使いすぎるのは禁物


「どないしたん?」

「あ・・ううん!試合しよ!」
今からそっちに行くね。
そう伝えて、海里は一度白石の前から姿を消した

彼女のいってしまった方向を、見つめる。

「っよっしゃ…!」

誰もいない中、白石は満面の笑みでガッツポーズをした。


***


白石君のもとへ向かう途中、廊下で四天宝寺の部長さんと、うちの部長に出会う

「あ、卯月さんやったっけ?」

「はい!
おはようございます」
部長も
なんて、私は一度足を止めてしっかりと挨拶をする

「今日はマネージャーの君なら知ってると思うけど
合同練習や
もちろん、君も参加してくれるんやろ?」

その言葉に、部長は止めようと口を開く
でも、それよりも先に私が口を開く

「はい
もちろんですよ
よろしくお願いしますね」
にっこりと笑ってそれだけ言って・・

私はその場を後にした

チラリと時計を見る
朝練まであと一時間半

「これだけあれば大丈夫だよね」
小さく独り言を言うと、私は苦痛を少し忘れて楽しそうに駆けた







あいつ以外の相手に、弱みを見せるのが、苦手TLDR

[→]

1/33ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!