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あれは、なんだったんだろう

ゆっくりと、あの桜の木に歩み寄る

昨日、彼と・・確かに目があった
でも、だって、あの人は・・私のこときっと忘れてる、し

・・もし、もしもずっと気付いてたらどうしよう
気持ち悪いと思われていたら?

考えただけで、目が潤むのが分かった

なんで、なんでだろう
なんで泣きそうなの?
なんで・・こんなに苦しいの?

私は、考えを消すように頭を激しく振った

気付いてるなんて、そんなことない!
そんな、こと・・

そっと、桜の木に触れる

大丈夫、だよね・・?
桜に話しかけるように、木を見上げた

すると、


「また会えた」


そこには、

ずっと目で追っていた綺麗な赤髪・・


あの時のように、ニッと笑ったその人は、
よっ という声と共に、私の前へ下りてきた

「二度目まして
二年の丸井ブン太だ
あんたは?」

いきなりだったけど、自己紹介、に
私は心で小さく呟く

知ってる、

「あ、えっと、一年の卯月 海里、」

「おう!知ってる」
へへ、と笑うその人に、私は驚いた顔をする

だって、この人・・『知ってる』って・・

「え・・?」

「だから!
知ってる。あんたのこと。
ずっと、あそこから見てただろ?」
指さされたそこは、初めてこの人が・・丸井先輩が現れた
私が、テニスコートを見つめていた、一階の窓

それに、私は『知られていた』と、目を見開いて
駆け出そうとする

でも、駆け出すために振った手をすんなりと捕まれてしまった

「なっ」

「顔、真っ赤」
クスクスと笑うと、その人は掴んだ腕を引く

「俺が振り向いたら窓の下、隠れただろ」
その言葉に、私の顔はさらにどんどん赤くなっていく

どうしよう、どうしよう

「いつも気付くとそこに居るから・・
それに、初めてあったとき、この桜のこと優しそうに見てたから
ここに来れば会えると思って、

待ってた」

優しく笑うその人・・

この人は、いろんな笑顔を持ってるな・・と、どこか遠くで感じた
そして同時に、

待ってた、って・・

彼の言葉が、耳を離れない

「俺さ、高校は付属行くんだ」
急に変わった話しに、私は赤面を隠すために俯き気味だった顔を上げる
すると、目があったと思ったら「あんたは?」と問われた

「私、も・・」
言うと、
「そっか、
っそっか!」
その人は何度もそう呟いて、本当に嬉しそうに笑う

「また一緒だな」

「は、い」
無邪気なその人に、私も驚きつつも返事をする
そして、その人は一度瞳を閉じると、私を掴んだ手を強めた

「ずっと、俺のこと見てて
俺も、ずっと

見てるから」

愛しそうに笑うその人は
あの日のように・・綺麗で
目を・・奪われた

「また会おうな」

その言葉は、きっと私たちに丁度良い距離

「はい」

私は、彼と同じように、微笑んだ




あぁ、この感情の名前、

わかった





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