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「丸井、また見てるぜよ」
「あ?」
ふいに声をかけられて、俺は声の主、仁王に振り返る
「桜の君」
にやり、と笑うそいつ
『桜の君』、は
あの入学式の日の話しをした仁王が勝手に付けた少女の名前
「ほんと、だ」
それに、目を向ける
普段は、チラリとしか向けない目
でも、
そろそろ俺も気にしていることを知ってほしくて・・ジッと、彼女の目を見つめる
・・と、
「あ」
仁王が低く呟く
そして、俺は少し動きを固めた
なぜかって、
「ククッ」
「〜っ」
彼女とやっと目があったかと思うと、すぐにかくれてしまったからだ
入学式以来、何かあると俺はあの少女と会った場所に視線を向けた
すると、いつもその子は桜の木を見てて・・なんだか・・惹かれるものがあった
つい向けるそこ
桜が散り、葉しか残らなその木
でも、彼女は春が過ぎてもそこにいた
花のない桜なんて何が楽しいのだろうと思っていたら、
ある日仁王に言われた
あの子が、俺のこと見てるって事
あんな遠くにいて、テニスコートなんて見えてないって、最初疑ってたけど・・
チラリと見ると彼女の視線はいつもこちらに向けられていて・・、視線に気付くたびに心臓の音が早まるのが分かった
気付いてから数日、頼んでもないのに仁王はあのこの名前を調べてきて
態度では余計だなんて言っていたけれど、心の中では何度も唱えた
卯月・・卯月 海里
なんで、こんなに気になるんだろう
なんて思わない
理由は・・分かってるから
でも、あの子の行動だけで、あの子の気持ちを捏造してしまいたく、なかった
だから、今は・・ただ
ただ、少しでも近くに歩み寄りたかった
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