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入学式から数ヶ月
私は、あの赤髪の少年と会ったこの場所によく訪れていた
最初は桜を見に・・
でも、桜はやがて散り、来る理由もなくなった
はず、なのに・・

なんでかは、分からない
でも、そこから小さく見えるテニスコートに気付いて・・
そこで目立つ赤い髪が、私の目を奪った

こんなにもなんで彼に目を奪われるのだろう
それ、は、
きっと、
あの日の桜吹雪の中にいた笑顔が・・とても綺麗だったから・・


今日も、そっとテニスコートを覗く
こんなに離れていても分かる
無邪気な笑顔に、楽しそうな笑い声・・

私は、優しく、小さく微笑んだ


・・彼は、『丸井ブン太』というそうだ
とても明るくて、ガムや甘いモノが好き

そんなことを、この数ヶ月で仲良くなった子に聞いた
彼は、とっても有名人だった
ここの学校は、テニスが強くって・・そのテニス部なんだそうだ

それが、なんだか遠くに感じて・・
あの日あの時、彼はすぐそこで笑っていたのに、と
胸が痛かった

彼は私のことを知らない、忘れてる
でも、それで良いんだ
それが丁度良い距離だと思った

彼は本当はとても遠くにいる人で、
あの日のことは、桜の花びらと共に散る、一時の夢

ふいに、目で追っていたその赤髪がなびく
何を見ているか知らないが、丁度こちらから見ると正面で・・
胸が痛くなるのに、嬉しそうに脈を速めた

・・え、
っ!

彼と、目があった

私は瞬時に窓に背を向けて、窓の下へ座るように隠れる

こんなに遠くに居るんだ
目が合うはずない
でも、でも、今・・確かにっ

私は両手を口に当てて、速く動きすぎている心臓を落ち着かせた・・



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