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擦心
「ただいま」
誰もいないはずの部屋に、自分の声が響いた

と、
同時に・・
「海里!!」

つかれてもう寝たとばかりに思っていた、
みんなの姿がそこにありました。




「え、みんな!?
ど、どうしたの?」

「どうしたじゃねぇっ」
驚いて、目を丸くしながら言うとブン太が私の肩を持って怒鳴るように言った
そして、大きく息を吐きながら「よかった・・っ」と膝をついた

「え、え?」
その姿に私は他のみんなを見渡す

「部屋にも風呂にもどこにも居なかったから心配したんじゃ」
軽い苦笑いを交えた顔で雅治が私に伝える

心配・・

素直に嬉しいと感じた
でも、
どこか引っかかる

みんながここまで焦るのに『それだけ』のわけ・・

「海里?
これ、なぁに?」

ふと、我に返ると
ニッコリ
そう効果音の付く笑顔で精市が私の肩に掛かっていたジャージを見せてきた

それは、帰りざまに寒いからと白石君が掛けてくれた物・・

「え、えーっと」

「四天宝寺のジャージだな
サイズから・・白石、蔵ノ助、か」

「毎回言うけども、なんで分かるの!?」
柳君に言うと、彼はなぜか誇らしげに笑う

「へー・・
俺らが探し回ってる時、海里は白石君と何してたのかな?」

こ、
怖いです

そんなに近寄らないで!

「い、いや、別に・・」
言いかけて、口を結ぶ

ここでみんなに『走ってきた』なんて言ったら・・

「!」

そう考えついた時、
先ほどの問題が一気に解けた
「気付かないとでも思った?
海里のランシュー・・靴箱になかったから俺ら本気で焦ったんだよ?」
さっきの笑顔ではなく、真剣な表情の精市
周りのみんなも同じだった

そして、ふと気付く

私が出て行った時みんなはすでにお風呂に入っていたのに、
みんなはパジャマじゃなく、普通の服を着ていて・・すごく、汗を掻いていた

「あ・・」

「ごめん、過保護すぎだって分かってる
でも、一度辛そうな君を見た身としては心配でならないんだ」
そういう精市は、どこか辛そうで・・
どれほど自分がみんなに『仲間』として認めてもらえているかが・・痛いほど伝わった

「ごめ、ん」
そう、みんなを見て言うと
みんなはまた小さく息をついて笑うんだ

「無理は、しちゃだめだよ」

みんなは、
優しすぎる


目頭が熱くなった





みんなが優しければ優しいほど・・
罪悪感に見舞われる
TLDR


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あきゅろす。
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