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「あ、そうだ」
食事を済まし、片づけをしていると私はあることを思い出した

「あ、ねぇ、みんな」
言いながら私はあたりを見渡す
と、

・・ここから四天宝寺の人たちがいるところまでは少し距離があるのが分かる


「これ、立海の人に配っておいてくれない?
私四天宝寺の人に配ってくるから」
そうみんなにクーラーボックスから大きな袋を出して手渡した

「なんじゃ?

・・ゼリー?」

「うん、作ってきたんだ!

あ、じゃぁ私配ってくるから宜しくね」
雅治が袋を覗いている横で笑顔で言うと、私はクーラーボックスを抱えたまま足を踏み出す


・・が、
「海里、遠いし俺が行くよ」
精市に腕をつかまれ、足が止まる

それに、
ふんわりと私は顔を和らげて精市と目を合わせた

「大丈夫だよ


行ってきます」


私は、軽い足を笑顔で進めた





「『足も心配だけど、
それだけじゃないんだ。女とばれた今、他の男の所に行ってほしくないんだ』
しっかり言わないと伝わらないぞ」

「・・うるさい蓮二」










「おっじゃましまーす!
立海からゼリーの差し入れです!」
そう言って四天宝寺の人たちの輪に入ると、周りからは『おぉ!』という歓声が上がる

それに私は笑って答えて、上級生から順に渡していく
どの人も『ありがとう』という言葉を忘れずに言ってくれて、どこかあたたかな気持ちになった


(作ってきて、よかった・・)



そして、後2人・・となった時、

「・・どうぞ」
どこか気まずくなって、私は苦笑いをしながらその人・・忍足謙也に手渡す


・・忍足謙也は侑士の従兄弟・・
何回か氷帝に遊びに来ていたり、パーティーに顔を出しているのを見たことがある


と、

「なぁ、君名前なんて言うん?」
ギクシャクとした雰囲気をかき消すように明るい声が私たちの間に入ってきた
声の主は・・

握手の時の包帯を巻いた男の子だ


「あ、えっと卯月 海里、です
・・君は?」
そう私が聞き返す、と・・彼はフワッと笑った




・・うわ・・




その笑顔が、整った顔をさらに引き立たせていて・・つい

私は一瞬、見とれた




「俺は白石蔵ノ介
んで、こっちが同じクラスの忍足謙也や!」
言って白石君は隣にいた忍足謙也の首を自分の方へ引いた


「、よろしく、忍足君」
少したじらいながらも私は忍足謙也に挨拶をする


と、

忍足謙也は面食らったような驚いた顔をした


「自分、かわったな・・」



呟くように言って、

でもすぐに口をふさいだ


「とと、ちゃうかった!すいません!」





・・そっか、


忍足謙也が知ってるのは『卯月』の私だから・・

あの時の私にタメ口なんかきいたらSPに連行もんだったし・・



「いいよ、

普通にして?
今はSPとかついてないから」
吹っ切ったような笑みを忍足謙也に向ける


この人は侑士の従兄弟だし、、
理由は伝えられないものの・・

良いかなって・・


それに、
少しだけでも『卯月』から解放されたかった


「ええんですか・・?」

「だから良いってば
今の私は『卯月じゃないの!」

私の言葉を聞くと、忍足謙也は先程よりも目を見開き、心底驚いた表情をした
「・・自分、本当はそのキャラなん・・?」


「そう、これが本物の『海里』」
クスクスと『自分』の表情で笑うと、忍足謙也は少し顔を赤らめて頭を掻いた



「(侑士が言ってたんはこの事かいな)」











「2人とも知り合いやったん?」

「う、あ、まぁ、な」
ふと、私たちを交互に見て、白石君が疑問符を浮かべる
それに、忍足君は苦笑いした

「せやったんや
なら言ってくれればよかったんに」
1人、仲間はずれにされて不服そうに白石君は言って、
私たちはまた軽い苦笑いで答える


すると、

白石君は「あー!」と急に声を上げた
その声に、忍足君と私は目を丸くして視線を移す

「せや!俺、自分に言いたいことあったんや」

「?」

「俺と試合してくれへん?」
ニッと笑って言うそれに
私はまた目を丸くして、

それから・・


同じようにニッと笑った

「良いよ
私、午後はBコートの控えとDコートの6試合目だから」

「おおきに」
楽しみやわ と笑う白石君に私も笑ってみせる


筋肉の付き方や、鋭さ・・
きっと、この子・・強い


足の痛みのない私は、そう思うと胸が躍った








「それじゃ、私行くね」
試合楽しみにしてる 暫く話した後、
2人に手を振って私はその場を後にした


「なぁ、謙也」

「んー?」

「何の話ししてたん?」

「・・ちょっとした、昔話や」


「・・ふーん」










少しずつでも良い
『私』を見てくれる人にたくさん出会えますように・・TLDR


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あきゅろす。
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