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ニッと笑って、
空(くう)から舞い降りた時に本当の『彼女』を目にして・・

何となく気付いていたものの、

その太陽に輝かされた
あまりにも美しすぎるその『少女』に

目を奪われた


それは、1番近くで見ていた選手の俺だけではなく
見ていた全ての人間を虜にした






*


「げ、ゲームセットアンドマッチウォンバイ立海リーズ6ゲームストゥー0」

その言葉と同時に閉じた試合
「部長が・・ゲームどころか、1ポイントも取れなかった・・?」
「あいつ、女やろ!?
男と試合して腕折れる子だっておるんに・・!」
周りのざわつきは収まることを知らなかった


「君、なんでここにいるんや?
女子の方に出たらかなり上、ねらえるんとちゃうん?」
個人の全国大会で優勝だって・・と付け足して、対戦相手は試合後の握手をしながら私にそう言う

「・・出たいのは、

やまやまなんですけど、ね」

それだけ、寂しく言い残して
私はコートを出ようと出入り口へと足を運んだ


すると・・

「・・princess」


ふと呼ばれたその懐かしい呼び名に、私は静かに振り向く


「・・また、お目にかかれて光栄です」
そう頭を下げるその子は、
声は低くなっているものの・・覚えがあった


「(なん・・っ

!
・・侑士が、
言ってた、っけ)」


驚きもあり
彼の行動に悲しさもあり・・
表情が思っているように笑えなかった

でも、そんな私の無理した表情も彼は頭を下げていて見ることはない


あぁ・・


やだ・・
いやだよ・・

なんでみんな下を向くの・・?

私を・・‘私’を見てよ・・っ



「海里、俺は見てるよ
俺は海里が____
・・それに___」



彼の微笑み、そして寂しそうな表情を最後に
私は曖昧な回想をして、
この行為に一時期恐怖を感じていたのを思い出す


・・あったな
そんなこと

片眉を垂らしつつも、私は口を開いた


「・・こんにちわ
忍足謙也」



その言葉だけを残し、
私は固まっている仲間達の元へと歩み寄った



ねぇ
私、一歩踏み出せたと思わない?


ポケットの中にある薬をそっと握って・・






*


一瞬、彼女の声が聞こえたのを幻聴かと思った
でも、ひとしずく・・
俺の髪に触れて、

「!?」
俺は勢いよく頭を上げ、目を見開く


一瞬
ほんの一瞬だけ写った彼女の表情は・・
初めて見る、何とも苦しげな無理に笑ったものだった・・

その表情に俺は息をのむ
今まで冷酷な、人を見下したような顔しか見たことなかったから・・
・・だからなのか・・
その彼女の表情が

脳裏に・・焼き付いた


そしてそれ以上に、
「あの‘princess’が・・
俺に挨拶、を、

した・・?」
驚きを隠せなかった俺は放心状態のまま彼女の後ろ姿を目で追いかけていた

すると、
そこにあった光景に
さらに衝撃を受ける

「あ、せーいち!
ほら、全然痛くない」

「本当?本当に本当?」

「ホントだってば!」

見たこともないまぶしい笑顔で、
優しい表情の部員に囲まれているその子・・

「(あの子でも・・
そないな顔、するんや・・。)」

俺は動きを止め、
しばらくの間そんな彼女を見つめていた










(彼女は汗を全くかいていなかった
じゃぁ・・

・・この滴は・・?)TLDR


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あきゅろす。
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