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Limit7


「なぁ、」

唇をかみしめて涙をつなぎ止めている、と


「ちょっと、良いか?」












「・・どうしたんですか?」
声をかけてきた人物・・
向日先輩の後ろ姿に私は声をかける

場所はテニスコートからかなり離れて、校舎裏。
周りには人の気配すらない


「・・・」

「向日、先輩?」
背を向けたまま、何も言わない先輩に私は近づいていく


すると、

《パシッ》

「お前、誰だ?」
結構強い力で手首を捕まれ、軽くだけど睨まれた


「・・え・・?」
私は驚き、目を見開いたまま小さくそれだけ口にして、動きを止めた

突き刺さるようなその言葉、
指先から震えてくる自分の‘身体’






・・『誰』



「なに、言って・・」

向日先輩とは、若の先輩の中でも1番親しくして貰ってた・・
なのに、・・え?


やっと発せられた言葉がそれで・・
ごまかそうとしたのに、動揺のせいで、

笑顔に・・なれない



「っちがう。悪い。
わかってんだ、お前が海里だって。
・・っでも、」
向日先輩は私の手首に先程よりも力を込める

そして、俯いていた顔を一気に上げて、

「!」

パニック状態のように、焦った、揺れた瞳で私を見た


「っお前、本当に誰だよ!
なんで、・・なんでみんな変に思わねぇんだよっ

海里は、海里はっ






死んだだろ!?」


揺れていた瞳からは、とうとうボロボロと涙が零れおちて、
目の前の先輩はとても、、辛そうな顔をしていた


え・・・

なに・・

なにが、・・え?


『私の』記憶は消えたはず、でしょ・・?
なのに、

「なぁ、なんで、なんでだよ・・
俺馬鹿だから、理解できねぇよ・・」
先輩はまた俯いて、消え入りそうな声で呟く

その姿を見て、
私はつかまれていない手で服の胸あたりを強く握った

先、輩・・っ

・・でもその心情とは裏腹に、
その先輩の姿に・・冷静に現状を理解してしまう自分がいる


・・思い出してる
向日先輩は、思い出しちゃったんだ



大、丈夫・・
落ち着いて
・・・大丈夫


「海里・・海里・・!」


もう、若にあんな顔はさせない

「向日、先輩」

絶対に。

「なんっ」
私はスッと向日先輩の額へと手を伸ばす



もしもの時のために教えておきます



・・・さようなら、


「『私』を忘れないでくれて、」


「海里ー最近日吉とどうだー?
喧嘩したら言えよ!日吉怒ってやるから!」


なんで、かな・・
手が震えるし、、

「ありがとうございました・・っ」

「ごめん、な。折角応援きてくれたのに・・、

・・日吉は悪く、ねぇんだ。
俺が、もっと考えて・・体力付けてれば良かったんだ
だから、・・っあいつんとこ、行ってやって」



ッ涙が止まらないや









大好きです・・
向日、先輩、








頬に、温かい道を感じた・・

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あきゅろす。
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