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残る物



昨日あれから私は1人で振動止めを探した。

探し始めて10分くらいで傘立ての下に転がってるのを見つけて、でも仁王君にはあまり良い印象じゃないみたいだから部活まで届けに行く勇気はなかった。

だから今日持ってきたんだけど・・なんか幸村君の机の周りにすごい男子の集団が・・・;;

クラスの女子が少し騒がしいからきっと噂の、、えーっとテニス部?の人たちだね。

友達に聞いたけどテニス部はかなり人気のある美形(?)ぞろいなんだと。。

まぁ幸村君はかっこいいのは分かるけど。
あの、、なんだ・・スキンヘットの外人さんは『美形』とは呼べない気が・・・

・・・・

・・・そんなこと言っちゃだめだよね!!



まぁ、とりあえず振動止めどうしようか・・;;

ふと幸村君を見てみるとなぜかこっちを指さしている

「?」
私は首をかしげて後ろを見る

誰もいない
・・・私!!??


そして隣で仁王君が顔の横に両手を横に出してあきれたように何かを言っていた。
その隣では赤髪のガムを食べている子と帽子の人が頷いていた。

なんだろう・・。
なんかすごい馬鹿にされてる気分;;

すると横の、目を開けてるか分からな・・・確か・・えーっと・・そう!!【柳蓮二】!!が何かを言おうとしている。

少し耳を澄ます

「名前は卯月 海里。身長157cm体重4じゅ「わーーーー!!ちょっとストップ!!!!!!」ん?」

思わず彼らの方に走って叫んでしまった;;
いや、だってこの人体重言おうとしたよ!?
てか何で知ってるの!!?


「何かようか?」
柳君が不思議そうに私を見る
「『何かようか?』じゃないわよ!!なんで私のプロフィール勝手に公開しようとしてるの!?てか何で知ってるの!?」

「フ、愚問だな」

今この人鼻で笑ったーー!!!!

「お前だけではなくこの学校の生徒のことはほとんど調べさせてもらっている」

え、それってプライバシーの侵害じゃないんすか!?



「そんなのはどうでも良い。さっさと元いた場所に戻りんしゃい。邪魔ぜよ」

後ろから声が聞こえたと思ったらそう冷たく促されて嫌われてるのを再確認した。


「あっすみません」

あんまり冷たい言い方されたからなんだか気が引けてつい敬語になってしまった。







・・あっ!今振動止め渡せば良かった!!




仕方がないから移動教室のとき、みんなが居なくなったのを見て小さい袋に入った振動止めを幸村君の机の中に入れておいた。


小さいけど・・分かってくれるかな?








移動から帰ってきた次の時間、ノートから目を離してふと前を見ると幸村君が笑いながらこっちを見ていて、ドキンっと胸がなった。





授業が終わると幸村君が私の机の前にゆっくりと近づいてきて、また私の胸はドキドキと五月蠅いくらいに鳴っていた。


「振動止め、卯月さんが見つけてくれたんだよね?
ありがとう」

そう言って、振動止めを私に見せる幸村君のその笑顔は黒笑いとかそんなんじゃなくて、ホントにちゃんとした『ありがとう』の笑顔で、なんだか嬉しくなった

「ううん!見つかって良かったね」

「うん。助かったよ。それでさ、卯月さんマネージャーやっぱりやってみてくれないかな?」

「えっでも男の人のが良いって仁王君いってt「あーーーー!!それ俺の振動止め!!」


私の声はその子の声によってかき消された

・・・・。
折角幸村君と話してたのに遮るのは誰だ!!!!?

声の聞こえる方向に顔を向けるとさっき仁王君の言葉に頷いていた赤髪君。

赤髪君はズカズカと教室に入ってきて幸村君の方に駆け寄った。

「幸村君!見つけてくれたん?サンキュー!恩に着るぜぃ」

あっ赤髪君のだったんだ。
・・確かに、ラケット振り回してふざけてそうだな・・

「違うよブン太。彼女が見つけてくれたんだ」

「っえ、彼女って・・」
赤髪君は私を見て固まる

「マネージャーになろうとしてる子じゃんッ」

えっ!?いつからそんな話しになったの!?

「えっちがっ「ブン太。違うよこの子に俺が頼んでるだけであって彼女から言ってきたんじゃないよ」

「そうなんかぁ。まぁ振動止め見つけてくれてサンキューな!!助かったぜぃ!俺、丸井ブン太!シクヨロ☆」

赤髪君・・基、丸井君は顔の横にピースして、ウィンクしながら自己紹介をしてくれた。

「あっ卯月 海里です。よろしく」
そう言うと丸井君は手をさしのべて握手を求めてきた。

なんだか丸井君って可愛いなぁ

丸井君の前に私も手をさしのべ、握手をする。
私はその時の丸井君の笑顔が可愛くて思わず笑顔になった。


すると
丸井君はボンっと顔が赤くなった

「丸井君?」

「えっおっなっ何?」
丸井君は明らかに動揺していた。

てかどもり過ぎだよ

「顔、赤いけど平気?」

「うっうん!!平気!! あっ俺教室戻らないと!じゃーな幸村君、海里!」

「あっうん。バイバイ」

「また部活で」

そう丸井君に言った後幸村君がくるりとこっちを向いた

「で、さっきの話しなんだけど、どうかな?(フフ、きっともうブン太は反対しないね)」

「あー。でも仁王君は男の人が良いって言ってたよね?」

「まぁ、、でも今本当に人手が足らないんだ」

幸村君は少し眉を垂らして、本当に困っているようだった。

うぅ!!そんな目で見られたら・・

「えっっと、でっでもッ「幸村。嫌じゃと言ったはずだぞ?」

また遮られた!!!!!!
・・まぁ今回は助かったけど・・

その声は私を嫌っている彼の声だった



仁王雅治

「仁王!でm「女は嫌じゃ」・・あまり我が儘を言わないでくれ。もう男の当てはつきただろ??」

「そうだが・・」

「それにテニスのことを知らない子より知ってるこの方がよっぽど良いだろ?」

「でも働かなかったら意味がないぜよ」

「本当に男目当てだったら俺が誘う前に彼女からマネージャーにさせてくれと言うと思うけど?」

「じゃが、、」

「それに、席が近いし聞こえていただろ?彼女が男目当てなら誰も見ていないところであんな小さい振動止めなんかわざわざ探してくれると思うかい?」

「・・あとで、幸村に渡して『好感度アップ』を狙ってるかもしれないぜよ」

・・うわ、、何かそこまで言われると傷つくな・・
振動止めは別に何も考えないで探したのに・・

「仁王。あまり人を疑いすぎるな。」

「っ・・。幸村ももう少し人を疑った方が良いと思うがの」

それだけ言い残して仁王君は教室を出て行ってしまった


そして、はぁ とため息をついて幸村君は申し訳なさそうな顔をした。

「ごめんね卯月さん」

「ううん。大丈夫」

「でも、仮マネージャーとして部に来てくれないかな?」

「え!?今仁王君私のこと断固拒否してたよね!?」

「あー、、まぁ、でも君が仕事する姿を見たらきっと納得してくれるよ」

「でも・・『嫌だ』って人がいるのに、部に入れてもらっちゃ悪いよ」

そう言い終えたところで休み時間終了のチャイムが鳴った

幸村君はチャイムを聞いて渋々席に着いた。









放課後、あれから幸村君と話す機会は無かった。

美和に『一緒に帰ろう』と誘われたけどなんだか1人で帰りたい気分で・・
だから適当なことを言って断った。

・・あとでこの埋め合わせをしよう






そんなことを考えていたら隣からボールの音が聞こえてきた。

テニス・・?

私はそこに駆け寄ってのぞいてみる

そこには真剣な顔で試合形式の練習(かな?)をしている女の人たちがいた。


・・・女テニ
入りたかったな・・。
テニス、したいな。


私は衝動的に近くに置いてあったラケットとボールを握り、近くの校舎の裏で壁打ちをする。

パンッと打つ感覚はとても気持ちが良くて・・
でも足を踏み入れる時、とてつもない痛みが足から体中を駆けめぐった

いつも、歩いているだけでズキズキと痛みを感じたけどそれとは比べ物にならない痛みで私はそれに耐えながら10分打つことすらできなくて・・

その場に座り込んだ。



ふと
痛みさえ感じなければ・・
と思ってしまった



私は今と全く同じ事を考えて強力な痛み止めに手を出してしまったんだ・・・



私は
悔しくて涙が出た

なんで・・なんであの時、テニスをやめて治療に専念しなかったの・・?

それに・・普段からお祖母ちゃんの言うとおり・・・お兄ちゃんと同じように過ごしていればこんな事にはならなかったのに。。。

なんで?

なんで?


あんなに元気よく走り回れていたのに・・
あんなにコートの中を走り回っていたのに・・


テニスがしたい



テニスがなくなったら私に何が残される・・・・?





私はラケットとボールを元の場所に戻して、泣き顔を誰にも見られないよう俯いて家に帰った





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