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122.背
「のっぽー!」
「むかつくー!!」
数メートル先で喧嘩を売る小柄な男子に向かって、手に持ってるボールを思いっきり投げた。
「おー、怖い。」
美香ちゃんがんばれーって声援を受けながら外野から投げられたボールを受け取った。
敵はあと1人。負けられねー。

「こらーっ!チャイム鳴っただろー。早く教室に戻れー」
声のしたほうを見ると教室の窓から担任が叫んでいた。適当に返事を返し、しぶしぶとグランドから出ることにした。

「美香ちゃん、おつかれー。」「かっこよかったよー。」
「のんちゃん、みゆ。おつかれー。」
「あいかわらず勇樹くんと仲いいねー」
「ぜーんぜん。あんなチビ」
「美香ちゃん背ぇ高いもんね」
でも勇樹くんかっこいいよねー、という言葉を聞き流し、勇樹を盗み見た。

知ってるもん。だって勇樹のこと…
あ、こっち見た。てゆーかこっち来た。
「睨んでんじゃねーよ。おとこおんなー!」
瞬間、首元に冷たい風が触れた。
「ちょっと!マフラー!」
「あ、美香ちゃん、教室戻らないのー?」
「ごめん、先戻っててー」
マフラーを持って逃げ回る勇樹を追いかける。あたしも勇樹も運動は得意な方だ。あとちょっとなのに、なかなか追いつかない。

「きゃ!」
「なーに、こけてんだよ。だっせー。」
なんで、なんで、なんで!?むかつくっ!
絶対泣くもんかって耐えてるのに我慢の限界だ。
「な、何泣いてんだよ」
「うるさいな。どーせのっぽだよ!おとこおんなだよ!可愛くなくて悪かったな!」
すごくびっくりした顔してる。泣きたくなかったのに。意志とは裏腹に出てくる涙。

「ばーか。」
びっくりして顔をあげると、勇樹が目の前に座りこんでいた。
「いつまでも俺よりでかくいれると思うなよ。中学生になればすぐ追い抜いてやる。」

「楽しみにしてる。」

ちょっとだけ2人で笑った。涙はいつの間にか止まってた。


あきゅろす。
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