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花と野獣
☆☆☆

普段お世話にっている商店街の果物屋さんでオレンジを買って足早に帰る。

店に着くときにはザーザーと雨が降ってきて八重は濡れ鼠になっていた。

視界が悪いなか急いで店に入る八重は気付かなかった、店の前に数台のバイクが止まっていることに。

カランカラン

八重「雨さーん!!タオ、ル…。」

扉を閉めながら雨を呼び、タオルを持ってきてもらおうと思って振り向いた時に八重は固まった。

ゴトゴト

固まった拍子に抱き抱えていた力が緩んでしまって、何個かオレンジが地に落ちる。

だが、八重は目の前の光景を固まったまま凝視していた。
何故なら、今まで八重が関わったこともなく、この店で見慣れないカラフルで目付きの悪い集団がいたからだ。

グチャ

?「うわっ!何でこんな所にオレンジ!?」

その声で、やっと八重は正気に戻った。

カウンターで今まで突っ伏して寝ていた金髪の男が立ち上がろうとして、転がってきたオレンジを踏んでしまったようだった。

八重「大丈「誰だてめぇ。」夫…」

駆け寄ろうとした八重の前には茶髪でピアスをつけた少年が立ち塞がった。

又も固まった、八重の髪をその少年が鷲掴み痛さに八重は顔を歪めた。

八重「俺は、ここの従業員の春田八重だ。」

八重の言葉にざわめきが生まれる。
そして、八重はゾッとした髪を掴む少年から凍てつくような瞳で見られていたのだ。

「…そうか、てめぇが…大杉さんの宝か。」

ボソッと呟かれた言葉に八重は戸惑う。
だが、髪を掴む手には更に力が入れられて痛さに涙が浮かんできた。

?「…綺羅。手を離せ。」

綺羅の腕を掴んできたのは黒髪の美男子で少し長めの前髪から覗く鋭い黒い瞳が綺羅を睨み付けていた。

雨「八重っ!!!!!」

その時奥から出てきた雨が、店内を見て焦ったように八重の元に駆け寄った。

その時綺羅に捕まれた髪を離されて、八重はその場に座り込み雨に抱き込まれた。

雨「…黒…言ってあった筈だよなぁ?
新しい従業員が買い出しに行ってるって。それで、この仕打ちをするんならお前ら一生出入り禁止になるって解んないの?」

普段王子と言われるだけ、ゆったりとした口調と優しい雰囲気の雨だけあって、本気で怒っているのが解るほど口調が荒く、瞳は射殺すような冷たさを持っていた。

誠「…雨、そいつらの説教は後だ。
早く八重をシャワーに連れていってやれ。風邪をひく。」

奥から出てきた誠はバスタオルを八重の背にかけてやり雨に連れていくよう伝えれば、雨は八重の顔が青ざめている事に気付いて小さく謝り抱き上げて足早に連れていった。

フロアは相変わらず静まり返っていて、誠は口を開くことなく、綺羅の髪を鷲掴みにした。

「グッ!!!」

「「「ヒッ!!!!!」」」

綺羅の痛そう悲鳴が上がり、周りからは誠の行動に小さく悲鳴が上がった。



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