花と野獣
チームanimal
《一週間程で帰るが、何かあればすぐに連絡しろよ。》
その日の朝、八重はケータイとにらめっこ状態になっていた。
瀧が実家に呼ばれる事は少なくなく、月に一度はある。
長くて二週間。
《何かあれば…》こんなメールは初めてで八重は首を傾げたが、考えても仕方ないとケータイ
の画面を消した。
顔を洗って手早く準備をしたら祖母と暮らしていた小さなアパートを出てカフェに向かう。
ライオンの看板が見えて来て小さく欠伸を漏らす。
今日も百獣の王は輝いて見えた。
カランカラン
八重「おはよぉございます。」
雨「八重、おはよぉ〜。」
雨独特の緩い口調に朝から輝かんばかりの王子スマイルに八重は眩しそうに目を細めた。
八重「支度したら外の花壇の手入れしてきます。」
雨「は〜い。」
何時もの流れで、店内は雨が外は八重が準備する。
小春と小さな花屋をしていた八重は、外の花壇を愛しそうに大切に手入れしているのは周知の事実だった。
花屋は小春が入院と同時に店を閉めて、今はその場所はコンビニになっていた。
八重は花壇の雑草を抜いて水をあげる。
箒で周囲を掃いてライオンの看板を磨き、メニュー表を立て掛けて外の準備は終わりだ。
店内に入れば準備の終わった雨と、低血圧で眉間に深い皺を寄せ元々の強面を更に厳つくした誠がいた。
八重「誠さんおはよぉ。」
誠「おぉ。朝飯前くっちまえ。」
八重「はーい。」
八重は無表情ながらポヤポヤとした空気を出して椅子に座った。
これも毎日の光景で、朝、昼、夕と誠以外料理が出来ないので誠のご飯を皆で食べるのだ。
暮らす家は違えど、家族の用なこの空間は八重の心を暖めるのだった。
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