花と野獣
たった一人の家族
『バァ、卒業式終わった。』
病院の一室をノック無しに開ける少年はとても綺麗な顔立ちをしていた。
『バァ?』
何時もは優しく返事をかえしてくれる、たった一人の家族の祖母から返事がなくそっとベッドに近づく。
『…八重かぃ?』
重たそうな瞼をゆっくり上げて八重と呼んだ綺麗な少年へ顔を向けた。
『バァ?先生呼ぶ?』
不安そうな八重の声に顔を緩める。
『良いんだよ。八重。卒業おめでとう。
さて、八重前話したようにこれからはカフェの瀧くんにお願いしてあるからね。』
『…ぅん。』
『八重…沢山笑っておくれ。
あの子も、桜さんも私も八重の笑顔が大好きだよ。
さぁ、先生を呼んできておくれ。』
『解った。』
八重は微笑み祖母の手をキュッと一度握り立ち上がった。
『…幸せになるんだよ。』
祖母の囁きは部屋を後にした八重に届くことはなく、八重と担当医が帰ってきたときには祖母は穏やかに息を引き取っていた。
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