偽りのペルソナ 始動 シェリーは、綱吉達から姿が見えなくなったのを確認すると、すばやくコレッソの所に行き 「コレッソ様。私また急な用事が入りましたので失礼致します。ご機嫌よう」 彼の目を見つめ、そう言うとコレッソはトロンとした目になり 「…そうか、分かった。シェリー…」 一言、言うとコレッソはシェリーと会っていた事など忘れたかのように、人々の輪の中に戻っていった。 (これで、コレッソからは足が付かないわね) シェリーは、化粧室に入り、トイレの中で素早くドレスを脱ぎ、ウィッグを外し、ブルーのコンタクトを外し、メイクを落とし、隠していた上下黒のズボンとジャケットを着て、同じく黒のブーツに履きかえた。 黒のショートウィッグを被り、グリーンのコンタクトをつけると荷物をまとめ、化粧室を出る。 因みに、シェリーが出てきた化粧室はスタッフ専用の化粧室である。こちらの方が防犯カメラが少ないからだ。 荷物は焼却炉行きの所に捨て、見つからない様に、スタッフ通路の出口に向かった。 (流石に、部下の数も少ないわね。…まだ、パーティーは終わっていないし、ボンゴレの乗ってきた車に行きましょうか) 気配を消し、闇に紛れる。客人用の車が停車している場所に行き、そのまわりの木に隠しておいた、サイレンサー付きの愛銃を装着する。リングと匣も入っている。 ひときわ大きな高級車があった。ボンゴレの紋章が入っている。間違いない、彼の乗ってきた車だ。待っている運転手に、即効性の眠り薬を嗅がせた。 (数分、夢の中にいなさい) 後ろのトランクを開ける。思った通り…人一人は楽に入れるスペースはある。時計を見れば、そろそろパーティーも終わる頃だ。 体を折り曲げ、蓋を閉める。 ここからが、1番肝心だ。気配を完全に、消さなくてならない。本当は、今日は実際にドン・ボンゴレがどんな人物か理解する為に来ただけで、この手段を取ろうとは思っていなかった。 (今日は、様子見だったけどねぇ〜でも、ボンゴレの体調が良くないのを見たし…) そう、彼の具合が悪いのはチャンスだと思った。体調が悪いなら、ボンゴレの妙な力も鈍るかも知れない。 万が一にも準備をしてきたのが幸いした。ボンゴレ屋敷に、このまま上手く忍び込めれば… 気配を消し、呼吸の回数も減らす。そのまま暫く時がたつのを待つ。 辺りが少し、騒がしくなった。客人達が帰ってきたのだ。運転手が起きたらしい。車から降りて、ボンゴレを迎えている。 話し声は途切れ、途切れにしか聞こえない。 「…様、お待……おりました」「あぁ…………ね」 「…丈夫か?…ツナ、ふらついてるぞ」 ドアの閉まる音がした。二人が座った振動がシェリーにも伝わる。車は滑るように走りだした。トランクの中だ、少々体が痛くなると覚悟したが、運転手は優秀らしくそんな心配はなかった。体内感覚としては20分ぐらい走っただろうか? 車が停まり、ギィィィィィィと重い扉の音がした。それから車はまた少し走り、停まった。 綱吉達がおりたのだろう。そして車は少し走り停まった。 運転手は車をチェックする訳でもなく、離れたみたいだ。 念の為、シェリーは5分待った。 それから、トランクをそっと開ける、一応監視カメラがないかを確かめ、車から抜け出した。 時計を確認すれば、時刻は1時を回っていた。 (屋敷は広大、大量の部下と監視カメラ……日の出前がタイムリミットね。少なく共ボンゴレは、朝の6時までは眠りにつくはずだわ。体調が悪そうだったし、心配性と噂の名高い右腕がきっとボンゴレを休ませているはず……焦らずやれば、勝率は半分以上になるわ) |