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偽りのペルソナ
ボスの憂鬱
イタリアのとある土地に広がる、豪華な屋敷。
イタリアンマフィアの頂点に君臨するボンゴレファミリーの屋敷である。

その屋敷の一室では、ボンゴレ十世である沢田綱吉(25)が、書類の束と格闘していた。

最終確認をして、印を押す。ボスである自分の印がないと、部下達は行動に移せない。
黙々と作業をしている彼だったが、頭の中ではモヤモヤとした思いと戦っていた。


先月…長年自分の家庭教師をしていた最強ヒットマンであるリボーンが、ついに結婚をした。
今まで、愛人しか作らなかった彼がっ!!
家庭とかに興味のなさそうだった彼がっ!!

結婚をした。


しかも、相手は自分の守護者である六道骸(26)これは、周り中、いやマフィア中を驚かせたカップリングだった。

骸は過去の事もあり、性別を偽って生活をしていた。本当の性別を知っていたのは、ごく限られた人物だけだった。
本当は女性なのだから、問題ないと言えば問題ないのだが…………

(……いやいやいやあるだろうっ!!!知らせ受けたの、結婚する一週間前だし、二人とも恋人がいるだろうとは、思っていたけど…まかさぁ…)

そう…知らされてなかったのが自分はショックだったのだ。
その事にもショックだったけれど、何より驚いたのは自分がその事実を知って、骸の事が好きだったという事に気付いた点だった。


学生の頃は同じクラスの、笹川京子に淡い恋心を抱いていた。俗にいう、初恋というものだ。
けれど、彼女の事はイタリアに渡米する際に諦めた。この世界に、彼女を巻き込みたくはなかったからだ。
骸は最初の出会いは、最悪だったし敵だった、それが段々と姉の様な妹の様な、もちろん仲間の一人としても大事な存在だった。それが無意識に「恋情」を自分は抱いていたらしい。

結婚報告をされた時、彼女がリボーンの物になってしまった事が、凄く悔しい気持ちが沸き上がって、衝撃と同時に、自分の鈍感さ具合に嫌気がさした。

(俺ってやっぱ、馬鹿だよなぁ〜今さら気付くとか…さ。まぁマフィアの俺より、ヒットマンのリボーンの方がまだ、骸の事幸せにしてやれるよな…実際式で幸せそうだったし。俺が気付くの遅くて、逆に良かったのかも…リボーンと骸取り合うとか無謀だし、俺が負けそうだ;;; )



イタリアに渡米して、ボスになり早々と7年が経過していた。「ボスなんかにならない」と言っていた自分はまわりから見たら立派にドン・ボンゴレらしい。まぁ、そう見える様に動いてはきたのだけれど…何だろう。二人の結婚を見てから、妙に心に穴が空いている。
いつの間にか、持っていた万年筆が止まっていた。
その時、ドアが軽く叩かれた。

「入ってもよろしいでしょうか?十代目」


優秀な右腕の声だ。

「どうぞ、隼人」
「申し訳ありません、急ぎ見ていただきたい書類がありまして、十代目、お疲れですか?」
「いや、大丈夫だよ。…………ねぇ、隼人。隼人は今、恋人いるの?」
「…っえ!?…あ、まぁいなくはないですが…」
顔が赤い。

(いるんだな、誰だろう?)
昔は女性に対して姉の影響か、乱雑な彼だったが、今ではイタリア男として立派になっているみたいだ。

「所で、どうなさったのですか?急にそんな話を…はっ!!まさか十代目っ」
(やばっ!!バレたかな;;;)

「誰か好きな方が出来たのですか?この間のパーティーに出席していたご令嬢とかっ!!気になる方がいるのなら、すぐにデータをお持ちしますがっ!!あとは山の様に来る、見合い写真もあります!!」
(良かった、やっぱり隼人は斜め上の方向に話をもっていくね…………)
しかも、何だか燃えている。これは止めないと。

「違うよ、隼人。俺は別に好きな女性が出来た訳でも、見合いがしたい訳でもないよ」
「………そうですか」
「やけに、がっかりするね」
「いえっ;;…ただ、十代目が早くご結婚なされて、お子様の顔が見れれば、この獄寺隼人!死ぬほど幸せです」
(あぁ、トリップしてるなぁ………)
「まぁ、いずれはね。でも当分先だなぁー」
(俺って、どんな女性が好みとか分かんないな。京子ちゃんと骸、全然違うのにさ…)


残念がってる隼人に書類を渡して、俺は再び万年筆をインク壺に浸した。


あきゅろす。
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