じじ孫娘っ!
じじ孫娘っ11
ミーンミーンと、蝉が元気よく鳴いている。夏なのだから、仕方ない。季節も8月に変わり、連日猛暑続きだ。
顔の汗は、首を伝ってTシャツに染み込んでいく。
はっきり言って、気持ち悪い。気温のせいもあるが、それ以外にも汗が止まらない原因がある。
「いつまで、そうしているつもりですか?さっさと、中に入りなさい!」
「だって、こんなに威圧感がある家だと思ってなかったんだもんっ!怖いよ、骸っ〜」
自分と同じく、汗をかいているが涼しげな美貌のお陰か、そう見えない彼女に、ツッコミを入れられて、綱吉はさっそく、怖じけついていた。
「当たり前でしょう。雲雀家と言ったら、旧家ですよ。大きいに決まっているでしょうが!時間になりますよ。早く、入りなさい!」
「骸、ついて来てよ〜!」
「嫌です!今日だって、ここまでついてくるハズじゃなかったでしょう。それに私は、涼しい図書館に早く行きたいです」
厳しい彼女と違い、隣にいた優しい幼なじみ二人が、助け舟を出してくれた。
「ツナちゃん…私、ついていっても…」
「僕も行くよ」
「ダメですよ!二人共。綱吉君を甘やかしてはいけません!」
「骸の鬼っ!…うぅ;;;;分かったよ!行けばいいんだろうっ!行けばっ!」
「そうですよ」
四人の中で、1番口達者な彼女に止められてはクロームと炎真はなすすべがない。
「「ツナちゃん、頑張って」」
「ありがとうぅ〜クローム、炎真君」
(ちくしょー、骸にはお礼なんか言わないんだからな!)
勇気を出して、俺は門をチャイムを鳴らした、すると門は開いて「お入り下さい」との声が聞こえたので、仕方なく俺は進んでいった。
小さくなっていく、綱吉の背中と段々閉まっていく扉を見ながら、骸はため息をついた。
「やっと、行きましたか…やれやれ…」
「ツナちゃん、大丈夫かな…」「大丈夫でしょ。とって喰われる訳じゃないんですから、行きますよ。クローム、炎真」
二人は若干心配しながらも、骸の後をついて行った。
立派な日本庭園が、左右に広がるのを、驚きながらも綱吉は何とか進んでいく。
(玄関までの道のりが長いよ………)
一週間前…捻挫も治り、渡された名刺を見つめる事、数時間。痺れをきらした骸に、脳天チョップをくらい、ようやく電話をしたのだった。
震える指で電話をかければ、予想していた声とは違う人物。
渡された名刺は「雲雀恭弥」と書かれていたので、てっきり彼が出るのだと思ったのだが、耳に届いた声は、彼の秘書である「草壁哲也」の声だった。
綱吉は緊張が少し取れ、用件を伝えた。草壁からの返事は、「一週間後の11時に、雲雀家に来て下さい。材料等はこちらで用意しますので、沢田さんは来て下さるだけでいいので」との事。
(草壁さんがあっさり、言ってくれたからなんか安心しちゃって、この日になったけど……………やっぱり緊張するなぁ〜あっ、玄関やっと着いた)
大きな、引き戸の玄関だが、果して開けていいものか、周りを見てもインターフォンらしきものがない。
(開けていいんだよな…)
ガラガラッと引き戸を、開けると、
「よく、来てくれました。沢田さん。お久しぶりですね」
会った時と変わらず、黒スーツを身に纏う草壁は、いかつい顔に笑みを浮かべ、綱吉を迎えてくれた。
「お邪魔します。草壁さん、遅くなってすみません;;」
「大丈夫ですよ。今日は初めてですから、私がいる方が安心だと思いましたのでこちらに来ていたんです」
「助かります。その…立派なお家なんで緊張しちゃって…」
綱吉は用意されていた、スリッパに履きかえ、草壁の後をついて行った。
「雲雀家は歴史ある家ですから。沢田さんの様に若い方では、緊張してしまいますよね。でも、そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。雲雀も今日は仕事でいませんし、雲雀のご両親も現在はこちらには住んでいませんので」
歩くとかすかに、軋む音がする。
「そうなんですか?…じゃあ今は雲雀さん一人で?」
「そうですね。まぁ、数人の使用人と別の離れに私も住んでいます。雲雀は性格的に、他人と群れるのを嫌う方なので」
「あ…なるほど」
(思い出した、骸が言ってたっけ、群れるの大嫌いな秩序大好きな番長だったって…)
「台所はこちらです。用具や材料は一通り揃えてあるので、好きに使って下さい。使用人にも来ない様に言ってあるので、出来上がりましたらこちらの内線で知らせて下さい。お手洗いは、あちらの通路を右に曲がって奥になります」
「分かりました。何から何まですみません。あの…雲雀さんから何かリクエストって聞いてますか?」
「あぁ…そうでした。"ハンバーグ"と後は適当で良いと」
「ハンバーグですか………」
(この間もハンバーグに手を伸ばしていたし、好きなのかな?ハンバーグ……)
「分かりました。出来たら内線かけますね!」
草壁が出ていった後、綱吉は持ってきたエプロンをして、手を洗った。
「ここまで、来たんだ!やるっきゃないよね」
勢いよく、冷蔵庫を開けた!
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