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novel
2

この人が俺のマスターかぁ…

そう思うと自分の中にすごく温かいものが流れこんでくるような錯覚があった

自分を生み出してくれた人たちの中の一人にマスターのお父さんがいる
その人の娘さんが俺のマスターになるって知った時は嬉しかった
よく娘さんの話をしてもらっていたし、写真も見せてもらっていて優しそうな人だなと思ってたから

目の前に座っているそのマスターはひどくソワソワしている
出会いでちょっと失敗しちゃったからかな?

本当はオレを見て驚いたマスターに来ることになった経緯を話して、それから俺が詳細を説明していくつもりだった
まさかバッグで殴られるとは思わなくてびっくりした…

とりあえず、マスターに説明を始める
ことの発端と目的、ボーカロイドとしての使用法、食事などの生活面…


「だいたいこんな感じです」


一通り説明を終えてマスターを見ると、ちょっとデータの許容量を超してしまっているような顔をしている


「えっと…つまり、しばらく一緒に暮らせって事……ですか?」
「はいっ」

どうやらインプットできたようだ
安心して俺は思いっきりうなづいた


「ですので、これからよろs」

「だが断る!」


…え?


いきなりの言葉にフリーズした


「よりによって一人暮らし中の娘にこんな怪しいヤツ送り込むか?
同年代の女の子とかならまだ理解できるが、男だし
食費とか生活費とかどうしろと?
それに私にはアナタを養う能力はないっ」


よくこれだけ言えるな、と感心しながら俺は考えを巡らせる


また、あそこに帰るのは嫌だ
別に嫌いな訳ではない
温かくて優しい人ばかりだ
…ただ、自由がない
あそこではオレはあくまで"物"でしかない


もっと自由にしたい

歩きたい
話したい
歌いたい
そして…


一生懸命メモリーを漁っていると、ふとマスターのお父さんに教えてもらった魔法の言葉を思い出した


「あの、マスター?」
「だから、私はあなたのマスターにはなれないって」
「お礼は出まs」
「じゃあ、これからよろしくね!カイト」


魔法の言葉はすごい効果だった

マスターの切り替えの速さに呆れる前に俺は嬉しかった
この人のそばが自分の場所になるんだと思って


こんな幸せをたくさん見つけていきたい



愛されたいと思うのはワガママ過ぎだろうか…



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あきゅろす。
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