novel
3
問題なくマスターの通う大学に到着した
講義室まで迎えに行こうかと思ったがマスターの渋い顔が予想されたため実行は未遂に終わった
結局俺は正門で待っていることにした
最初近くの警備員さんに訝しげに見られたが、ささずに持っている傘を見て納得してくれたようだ
俺の算出した結果だとそろそろマスターが来るはずだ
あ、遠くでマスターの話し声がする
それと誰か……あぁお祭りで会った季子さんと話している
出来ることなら今すぐに駆けつけたいが、ここはクールに行くと決めたのだ
頑張れ俺の制御システム…ッ
「あれ、あの人千聡の従兄弟さんでない?」
「え……あ!」
な ぜ マスター気付かないし…
若干凹みながらも俺はマスターの方へ目をやる
季子さんの傘に入れてもらっているマスターは目をパチクリさせている
マスターは驚く事があると瞼以外の体が一時停止するようだ
「カイト!どうしたの?」
「千聡が傘を忘れていたので」
持ってきました、と傘を差し出す
そして
「ありがとうね」
マスターの見せた笑顔に釘付けになった
研究所で見せてもらった写真の、俺が惹かれたちょっとはにかんだ柔らかい笑顔が目の前にあったから
「季子もありがとう!また明日ね〜
じゃ、帰ろうか。……カイト?」
「あっ、はい!返りましょう」
「どうしたの?なんか固まってたよ」
大丈夫です、と笑い返すしか出来なかった
なぜか…この気持ちをまだ伝えてはいけないと思ったから
やっぱり今はただ千聡のそばで歩ければ良い
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