novel
2
幸いヒサシのおかげで洗濯物は無事だった
しかし、別の問題が浮上した
「ちゃんと"持っていってください"って言ったのに……」
マスターの机の上に置いてけぼりにされた折り畳み傘を見ながら俺はため息をついた
マスターにテレビを見ると言う習慣はないらしい
本人曰わく「一人だと寂しいからBGMとしてかけている」ようで当然のごとく天気予報も右から左に抜けていく
さて…どうするか
この空の様子じゃすぐには止まないだろう
「あ……」
考え込んだ俺はある事に気付いて思わず声をもらした
これはワンパターンから脱するために俺が望んだ非日常ではないかと
思った瞬間、俺は外出用の服に着替えはじめていた
* * *
傘よし、鍵よし、ガスよし、見た目……及第点だろう
「よし」
自然と声が出て気合いが入る
ドアを開ける前に俺は一度目を閉じて計算をする
マスターの学校までのアクセスや講義終了時間から考えて30分ぐらい待つだろうか
これならマスターが濡れないですむ
「行ってきます」
誰もいない空間に儀式的に言葉を投げかけ、俺は目的地点を目指した
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