novel
3
「やっぱり千聡だ!
で、一緒にいる彼は?」
はい、お約束の質問が来ました
ボーカロイドです、という説明でもしろと言うのか
申し訳ないが私は語彙は人並み以下だ
それに「これロボットで一緒に住んでます」と言って信じる人はいるのだろうか
珍しく脳を活性させている私をよそに季子は「もしかして彼氏〜?」などと一人で盛り上がっている
「千聡、こちらは?」
ストローをくわえて間抜け面していたカイトが尋ねてきた
「あ…えと、友達の季子で同じ学校」
単語をつなげた程度の答えだったが、カイトは分かってくれたようだ
そして
「はじめまして。森住カイトといいます
千聡の従兄弟みたいなものです」
スラスラと言ってのけた
今度は私がキョトンとしてしまった
「なんだぁ…てっきり千聡に春が来たと思ったのに」
「そ、そんな事より季子はどうしたの?」
とにかく話題をズラそうと季子に話しをふった
彼女は暇だから見に来たんだと言い、じゃあねとやけにあっさり去っていった
あぁ、うんとずいぶん間抜けな声をあげながら季子に手を振った後、私はチラッと隣にいる"従兄弟みたいなもの"のカイトを見た
「ところでカイト、従兄弟みたいなものって何?」
私は結構焦ったよ、と言ったら再び彼はキョトンとして聞いてませんか?と逆にきいてきた
「森住さんに言われたんです
マス…千聡との間柄を尋ねられたら"千聡の父の祖父の兄弟の孫"と言え、面倒なら"従兄弟みたいなもの"と言えって」
「何……それ」
「社会生活適応試験の設定ですよ」
「設定…」
「はい、設定です」
なるほど、しかし随分と込んだ設定だ
我が父ながら何を考えてるのか分からない
「ところで、千聡……」
「なに?あ、たこ焼きでも食べる?」
「いえ、あの……なんでもないです」
カイトはちょっと困った顔をして笑った
どうしたんだろう
まぁとりあえず、なんか買いに行くか
「カイト、私ちょっと買い出ししてくるよ」
「あ…俺が行きます」
「ん?大丈夫だよ」
「いえ、行ってみたいですから
千聡はここで待っていて下さい
何買えばいいですか?」
そしてカイトはすぐ戻りますねと言って人混みに消えていった
カイトの耳が赤くなってるのに千聡は気付かなかった
彼氏?って言われてちょっと嬉しかったって……言えない
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