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08.Promise








そこは暗闇だった―――…













助けてともがいて手を伸ばしても届かない




誰も振り返ってくれない




追い掛けても追い掛けても











誰も振り返ってくれない……























「穢た血め!!!」




違う…




「化け物め!!!!」




違うッ!!




「陰陽族の出来損ないめッ!!!」






違う違う違う違うッ!!!!!













当主が戦争でなくなってから民は掌裏を返したように俺を崇めてきた。



それは生き残りだから?



出来損ないなのに陰陽族は俺しかいなくなってしまったから?





あんな罵っていたのに何故…?





ねぇ、
俺を見てくれないの?
俺はスバル。
みんなが見るのはこの忌ま忌ましい陰陽族という名前と力のみ。





俺は…


俺は、俺は俺は――……ッ!!!!!



































――……………キミはキミだよ?―





















「…………ッ!」






声に導かれ、勢いよく目を開け瞬時に起き上がる。
するといきなり体中に走った激痛に耐え切れず再びベッドへと身を沈めた。

霞む視界の中、ちらつく集中力を懸命に集め周りを見渡す。
そこには最後に見たガラス張りのトリカゴも銀髪のあの人物もいない…可愛いらしい家具と笑顔があった。






「起きた?」






天井を見つめているとブラウンに碧眼の少女が顔を覗き込んできていた。

見覚えのない顔…
きっと助けてくれたのだろう。





『ここは…』

「ここは私のお家、君空から堕ちてきたの」

『空から…』

「うん、天使かと思った」

『天使は綺麗な者をさすんだよ…』

「君、綺麗だったから」

『俺は汚いよ…』





ゆっくりと瞼を閉じ瞬きをする。
心を落ち着かせるために。
それから彼女へと視線を合わせ、看病してくれたのだろうこの子にスバルは礼をしなければと身体を起こした。





『俺はスバル。アンタが看病してくれたんだろ?ありがと…えっと』

「私、エアリス」

『エアリス、…ありがとう』

「どういたしまして」





少女はスバルの冷たい喋り方にも怯む事なく自分のペースで話す。
不思議な雰囲気の子だ。

安心したのかゆっくりと立ち上がるとエアリスは窓の外を見つめ口を開いた。





「キミね、プレートの上から堕ちてきたの。傷だらけで。でもね、教会のお花の上に堕ちたから助かったの。よかったね?」

『…ごめん』

「何が?」

『花、潰しちゃったんだろう?』

「ううん、スバルが生きていたことのが大切。貴方に会えて私、嬉しいから」





ごめんと謝る彼の片手を両手で握りしめエアリスは優しく微笑んでくれた。
それはまるで花が咲いたように可愛いらしく。





そして気づいてしまった。


この手のぬくもりと共に聞こえた星の声と、――――










「……逢いたかった。同じ運命、星の声聞こえる子」










『アンタ…



セトラか?』











「…うん。

 生き残り、だって。けど私、嫌じゃないの」

『……強いな』

「スバル、アナタは独りじゃない。私がいるからね?」











セトラ―――

それはこの星のために滅んだ旅をして生きた種族。



陰陽族もその血を引く分裂した種族。



そんな重い運命を抱えた子が他にもいたなんて…





スバルはほぼ治りつつある身体を起こしベッドへ腰掛けエアリスの両手を握りしめ見上げた。





『苦しかったら笑わなくていい、泣きたいなら泣けばいい。エアリス、俺達は…仲間なんだ』

「なんか嫌な仲間だね」

『そうだな…』

「キミの、…スバルの故郷にはお花咲いてるの?」

『あ、あぁ…たくさん。緑がたくさんあって小川が流れていて小鳥が囀る…平和な里だ』

「そっか、…いいなー」





天井を見上げエアリスは瞼を閉じ想像する。
ミッドガルにはない花や川のせせらぎの音。
自然と笑みが零れエアリスはしゃがみ目線を合わせた。





「スバルの故郷、いつか連れてってね?」

『あぁ、もちろん。エアリスに花畑をプレゼントしてあげるよ』

「楽しみにしてる!
スバルもお花達のお世話手伝だってね?」

『…あぁ』







俺達は会って間もないのに息が合う二人。
同じ運命を背負っているからかもしれない…。
出来ればそんなことは考えたくもない。



俺達は小指を絡め小さく小さく指切りを交わした。


end

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