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36.see off...




ジェノバと番いとなり生まれた存在。




"ラヴォス"




それは異世界の申し子。
生まれてはいけない禁忌。


ジェノバが雌なればラヴォスは雄と言えようか。



彼等は宇宙から来た生命体。
古代より見つけだされた細胞。

研究用ポッドに入れられ化石と化したその細胞は何もなかったかのように再び生きを吹き返し分裂を繰り返した。
それはこの世のモノとは掛け離れた領域の速さで繰り広げられ、まるで子孫繁栄を願うかの如く。



先の厄災、"ジェノバ"は神羅の手中に落ちた。
彼等は人類兵器とも言われるソルジャーへやモンスターの開発、揚げ句の果てにはある女性科学者の身体に植え付け、生態実験をも…


しかし、もう一方のラヴォスを彼等は知り得なかった。

それは追尾なる厄災。
ジェノバと番いとなる彼は彼女を追うかのようにこの星へ舞い降りその時が来るまでひっそりと深い眠りについていたのだ。
幼体から形を変えず、ライフストリームの流れる音を聞きながら…。



自然の異変に気づいたウータイの陰陽師が見つけ彼を封印した。
片方の勢力により星が嘆き、滅びの歌を歌いはじめるその時…最期の祈りを込めて。


































ソルジャーの身体やモンスターへと転位し分裂し続けたジェノバ…



それに対してラヴォスは俺の身体の中にただ一つ。



転位したジェノバの細胞、例えるならばソルジャー、彼等の中の彼女はそうは強くはない。
だがそれの影響を強く受けすぎた者、寧ろ転位濃度の高いマザーとなりえる者となれば話しは違う。

間違いなくジェノバは俺の中にいるラヴォスに気づき求めてくるだろう。








星が泣いている……

















「もう、みんな自分勝手だよ…」




裸足になり静かな泉の上をゆっくり歩く。
歩いた後にはキラキラと淡い光が残り舞い散る。

今宵は満月。
あの日、セフィロスとザックスと三人で見た月に似た綺麗な星空。
それぞれがもう戻れないとわかっていた。

スバルは身体の中から村政を天へと翳しゆっくりと哀しみの歌を歌いながら舞った。



ここは古えの森。
忘るる都の泉とリンクした死者の生命が集まる神聖な場所。
スバルが舞うごとに泉の周りに亡骸を無くした御霊がまばゆい光を秘め纏うように舞い集まる。
哀しみの舞い…この世界で唯一陰陽師だけが使える。


人はそれをこう言う…



"異界送り"と――…















「たくさん、死んだ…そしてこれからもっと…」



天へ舞い上がる御霊。
最期の御霊を見送った後、スバルはくるりと一回りし村政で泉面を円を描くように切った。
その切り口から光が溢れだす。




「ねぇ、セフィ…泣いてるの?」




北からそよぐ風が微かに血と焦げ臭い臭いが混ざり合う。
こちらの方向…そして最後に見送った御霊は間違いなくあの村の人達。














「行くよ、もう逃げないよ…」




腰に付けていた狐の仮面を付けスバルは北へと歩き出した。
仲間の血を付けた着物を、現実から逃げぬようにと背中へ羽織る。



もう十分逃げた。
もう十分守られた。




「次は、俺が守る番だよ」









鉱脈からライフストリームが湧き出、古代の知識が流れ出す。
それらによって絶滅したはずである古代のシダ植物達が栄え森が形成されたここは古代の細胞を宿す彼を愛しく包み込んだ。

まるで『行かないで』と、




「大丈夫、大丈夫だから。
俺は大切な人達を救ってまたここへ戻ってくるよ」




ウータイの神々は禁忌を犯した者など受け入れてはくれぬだろうから。

もう、俺には帰る場所などない。

元々なかったんだから辛くなんか無い。
悔いなんて、無い。




木々や動物達が左右に別れ道を開いた。

いってらっしゃい、と。

優しく、囁くように。
きっと彼等は守り合って生き延びてきたんだね、だから今もこんなにも元気に生きている。




「ありがとう…」




スバルは背中を押されるかのように森を抜けた。
この悲しみの風の吹く村、

ニブルヘイムへ。





































「裏切り者共が」




紅蓮一色にに染まる。
ひっそりと佇み綺麗な水が流れていた小さな村だったそこは…悲劇の渦に呑まれていた。
無数に散らばる屍、瓦礫と化した家。

その中、紅蓮の光に染まる銀。
彼の瞳は絶望と怒りに揺らめく。




「セフィロス!どうして!?」

「………」




セフィロスは何も答えず口元を微々に吊り上がらせ微笑み見を翻した。
それは愚者を嘲笑うかのように。




「クソッ!」




何が起きたというのだ?
ミッションによって派遣されてきた俺達はニブル山へ登り魔晄炉調査を開始した。
特に不備や支障もなくランクSSという名のに疑問を抱くほど順調に調査は終わり帰還命令が下された。
しかし、セフィロスは何故か帰還命令を無視し神羅屋敷に篭りきりになり、何かにとり憑かれたかのように文献を読みあさる日々。
ザックス達は仕方なく今回の指揮官である彼が撤退命令を出さない為に滞在を余儀なくされていた。

そして数日後、

…彼は狂ってしまった。

魔晄炉の内部を調査中、彼は最深部へと篭りずっと出てこようとはしなかった。
セフィロスは何を見たんだ…?

ザックスは息が絶えた村人を地へ丁寧に寝かせ立ち上がった。



セフィロスが向かった場所。

間違いない、ニブル山のあの魔晄炉。




「セフィ…何を見たんだよ?
何がどんだけあんたを絶望させたんだ?」




ザックスはバスターソードを背負い立ち上がった。
勘だけど、これから何か嫌なことが起きそうな気がするから。
それの前に、
それが起きる前に、彼を止めるために…。





「アンジール…どうかアイツを見守っててくれ」




ザックスは迷う事なく地面を蹴り上げ走り出した。
目指すは山頂の魔晄炉、
戦友…いや、兄として慕った彼、セフィロスの元へ。



END

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あきゅろす。
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