34.chill
「…お前そんなキャラだっけ?」
あれから数日。
ウジウジしてて何もやる気がなかったアイツを休暇開けに元気付けてやろうと出勤して直後、休暇の間ザックスはウータイに行っていたらしいと聞き…会ってみると
「え?休暇前の俺がウジウジしててウザかった?
な〜に言ってんのカンセルちゅゎん!このザックス様がそんなウジウジしてるはずがないでしょ★」
…………
う・ぜ・ぇ★
どうしちまったのコイツ!?
遂に鬱病の末期症状に到達しちまった訳!?
正直前のがウザくなくてよかった気が…いや、ウザかったが←
「なーなーカンセル!今日の昼飯何食おう?Aランチにすっかな〜Bランチにすっかな〜…なーやーむー」
つーか飯かよ!?;
まぁ…
変なもやもやが少しでも取れたならよしとするか。
「っ、しゃーない…
このカンセル様が奢ってやろう!」
「Σえ!?特盛でABどっちも!?
さっすがカンセル様〜♪」
「Σテメッ、どっちか一つに決まってんだろ!!!つーかお前のが高給貰ってんだから自粛しろ!!!」
「やーだよーだ★」
「ザックス〜!!!!」
ソルジャーフロアを走り回る二人。
見慣れたじゃれ合いに誰も気にとめず声を立て笑う。
以前までは有り触れていたいつもの光景。
ただ一つ違うのは無邪気に微笑むザックスの片耳に見慣れない空色のピアスが輝いていた。
……………………
『行くのか?』
サラサラと優しい風に撫でられ囁くように揺れる笹林の葉達。
月に照らされ虫の啜り鳴く宵の中、彼は着物を脱ぎ着慣れた制服に袖を通した。
「休暇、終るからな」
『意外に厳しいんだな神羅は』
「携帯にはGPSついてるし1stにはチップ埋め込まれるしイイコトないよ神羅は」
『けど、帰るんだろ?』
「あぁ、約束を果たさなくちゃならない」
汗と埃に塗れた制服は他から見たらただ汚いとしか思われないだろう。
だが、これはたくさんの戦地を切り抜け想いを背負って来た勲章。
「スバル、コレ貰ってほしい」
差し出された手。
握られたソレを手を伸ばし受け取ると表情が歪んだ。
手中で輝くソレ、
“ドッグタグ”――…
「ソルジャーだから、生きているとは限らない…死ぬかもしれない」
『………』
「約束したいけど約束できない分、これだけは持っていて欲しい…嫌、か?」
1stである以上、ソルジャーである以上死なないとは限らない。
わかっているさ。
だからこそ二つ製造されたドッグタグの片割れを皆大切な人へと渡し戦地へ出向く。
それの意味、重さ。
もう迷いはないんだな…?
『いらない訳無いだろう…?』
手の中のプレートに刻まれた彼―…
ならば俺はそれを導く風と成ろう。
スバルはザックスのバスターソードを奪い自らの長い髪を切り裂いた。
「スバル…ッ!」
『この星の運命を担う者、彼を護り給え…』
光が長い髪を持つ手に集まりそれは小さな結晶へと変わっていた。
よく見るとそれは空色に輝くピアスで…スバルの本来の瞳の色をしていた。
『俺からのお返し…お守り』
ふわりと微笑む愛しい彼。
絶対、絶対に生きてここに帰らなきゃならないんだ。
新しくピアス付けてもらい俺はスバルの細い首に自分のドッグタグを飾った。
先程入った社内速報のメールをスバルに隠しながら。
まぁきっと、気づかれているんだろうけどさ(苦笑)
「似合う?」
『似合わなかったら叩っ切る』
「Σうわ、家庭内暴力はんた〜い(笑」
『か、家庭内!?』
「そ、家庭内
…ありがとうスバル」
まだ辛いだろう彼の腰を抱き寄せ確かめるように抱きしめる。
これからまた長い間会えなくなる空白を埋めるように。
『…俺は待たないよ?』
「行くんだろ?」
『お互い穢た道だ』
ザックスのピアスホールを失い行き場の無い黒いピアスを手に取りドッグタグへと埋め込んだ。
帰ってきたら両耳にピアスホール開けような?
それは俺達に出来る今最も大きくて最も小さな約束。
サヨナラは言わない、
だってまた逢えると信じているから―…
『…行ってらっしゃい、ザックス』
「〜ッ、行ってきます」
ping-pong…ping-pong
『“緊急ですが人事召集を通達致します。
ソルジャークラス1stセフィロス、ソルジャークラス1stザックス・フェアは至急ブリーフィングルームへ召集せよ。繰り返す、〜”』
社内食堂内に鳴り響く。
「任務か?」
「みたいだな」
残りのご飯を掻き込むとザックスはカンセルにお礼と断りを入れてブリーフィングルームへと急いだ。
…58F
静寂に包まれるソルジャーフロア。
冷たい空気が犇めいていた。
シュンッと無機質な音が響く。
中には黒髪オールバックの男と銀の長髪を揺らす男と…
「やぁザックスくん。休暇早々すまないが任務についてもらう」
「統括、アラート数値は?」
「…未知数と伝えておこう」
「未知数!!?」
表情を変えない二人を差し置き声を張り上げる。
今までに緊急召集されることもあったがこれは異例中の異例だ。
「先日行われたミッションで不審なモンスターが発見された。それに伴うかね如くとある科学者が行方をくらましてしまってね…そのことと起きた事件が嫌に重なってだね、君達に調べてほしいんだ」
「宝条博士が消えた…?」
目を細め殺気を出すセフィロス。
宝条博士は今までにやって来たことにいい実験なんて一つも無いことからわからなくもない。
「だから俺達が呼ばれたのか…」
「先日タークス2名がミッション中にソレらのモンスター…いや、“人だった生き物”に遭遇し負傷した」
「“人だった”?」
「そう、人が死ぬと同時に目覚め媒体として潜んでいた人間の亡き骸を餌とし、喰らい生まれた…寄生成長型のモンスター」
「なっ、そんなんが!?」
「奴がいなくなったのはその数日前だ」
眉間に寄っていたシワが深くなる。
まさか同じ会社内にそんな危険人物がおのおのと生き同じビル内で実験をしていたなんて誰が想像出来るだろうか?
「…任務地は?」
セフィロスの問い掛けに室内が緊張が張り詰める。
指を組み肘を机に付きラザードはゆっくりと告げた。
「今回のミッション先は
………ニブルヘイムだ」
背筋が凍り付いた気がした。
END
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