33.birth
俺達の手は
綺麗なもんじゃない
たくさんの人を殺め
血を浴びてきた
…醜い
なんて醜いんだろうか
「人の皮膚や肉を切る感触は…決していいもんじゃない」
「好きな奴なんて物好きだけだぞ、…と」
辺りに散らばった人だったであろう死骸。
そんな亡き殻をまるでゴミを片付けるかの如く積み重ねる。
時期にここも焼き放たれ"無かったこと"にされる。
『ご苦労だった、帰還してくれ』
「はいはーい、任務完りょ…」
なんだ…あれは?
幾重にも散らばる骸の中、一人の骸の首に奇っ怪な碧の液体が輝く。
目を細めそれを見詰める。
倒した瞬間には何も感じなかったのに…
『どうしたんだレノ…?』
携帯の受話器部分から漏れる声より好奇心が先立つ。
恐る恐るそれに近づく。
「…なんだコレ?」
溢れ出る碧色の体液。
それはまるで意思を持ったように蠢き地を這う。
…一人とは限らない。
脳裏に危険サイレンが鳴り響く。
不意に足元に転がる他の骸の首元に目を向けると針を刺した跡が無数に広がりそこからトロリと同じモノが湧き出てきた。
「…ツォンさん、ヤベーよここ」
視線を巡らせば全骸から同じ体液が溢れ牙を剥き出し自らの家主を喰らい成長を遂げはじめていた。
そう、人間を家主としてモンスターが生まれた瞬間。
しかも…“何者かの手によって”。
有り得ない実像、信じたくない現実。
『どうしたんだ?おい、レry』
ピッ…ツーツーツー
「…ルード、いらん仕事が増えたぞ、と」
「…空爆まで後5分だ」
「それまでに情報を集めるぞ、と」
「…ああ」
ムクリムクリと生まれ立ち上がる“人だったモノ”
何かが、
確実に何か恐ろしいことが始められようとしている…
肌にピリピリ感じる嫌な予感。
これだけはこの道のスペシャリストとして敏感だから間違いない…
俺達は他から見ればただの人殺しかもしれない
だが、治安や危険から影ながら守っているのは紛れも無くタークスのお陰
だからこそ卑下されようがこの仕事に俺達は誇りを持っている
ただ…
血の匂いは拭えないのが欠点だけどな
(厄介ごとは嫌いだぞ、と)
タイムリミットまで後5分―…
電磁ロッドを構え直し二人は地面を蹴った。
END
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