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32.Fair







"水神様が守ってくださる"







ここの国の人はそう信じている

だから都中に川を張り巡らせいつも水と隣り合わせに生きてきた



迷信なのか或いは事実なのか…



皮肉なことに陰陽師は風と水を司る種族。
水神を崇める民の意識はもちろん彼等を神と崇めている。

ましてや陰陽の印しである太陽と月をモチーフとしたタオの紋章は陰と陽の関係を中立を物語る。
それを授かるモノはやはり通常の人としては見られなくなるのだ。
光の中に生き闇の中で人は眠る。
人は太陽を欲しそれを希望と崇める生き物。
しかし、彼等の司るモノは陰…つまり月の力を主とする力のが断然強い。







神話にとある伝説の狼が二匹いた。

彼等は陰と陽を司る。

名は……スコールとハティ。



彼等は二匹で一匹。





陰と陽の均衡をはかるためにいつも一緒にいたのだ。
陰は夕闇のような落ちつきを持ち陽のもつ光の温かさを求めた。
逆に、陽は陰の落ち着きを求めた。

そう、それがタオの紋章、均衡の意味。



陰陽師はさしずめスコール、言わば月の力…陰を司る種族。
だから彼等は太陽のような温かさを持つモノを求めている。

暗闇から助け出してくれる希望の光を……





























『お前やっぱり馬鹿だろ…』

「イテテテテ;もっと優しく!」

『できません』

「うぎゃぁぁあ!!!(涙」





ウータイエリアでセフィロスと刀を交えている最中、突如乱入してきた馬鹿犬ことザックス。
まぁクラス1stにもなればたいした怪我にもならないのだが、彼の場合運悪くセフィロスの薙ぎ払った刀を受け止め受け身をするも後ろに広がった海に見事に落ち岸壁に頭をぶつけたようだ。
そして今に至る。





『はい終わり』

「あー…痛かった」

『傷、消毒しただけだろ?』

「ウータイの漢方薬は強烈に染みるんですよスバルさん(涙」

『はいはい』





涙目のザックスを尻目にスバルは立ち上がり医療箱を棚にしまった。

ここは陰陽寮。
血を流すこの馬鹿犬を流石に放っておけなくて結局連れて来ざるをえなかった。

本来なら入れてはいけないのだが…仕方ない。



スバルは立ち上がり縁側に座り月を見上げる銀髪の彼に近寄った。





「…うちの馬鹿が世話になったな」

『別に』

「Σちょ、オッサン!俺アンタの息子じゃないんだけど!」

「保護者代わりには変わりない」

『手の焼ける息子だな』

「全くだ」

「余計なお・世・話ッ!!!
つーか息子じゃないから!!!」





聞いた話しだが、セフィロスはたまに此処へ来るらしい。
敵として刀を交え本気で殺りあった二人なのに、不思議なものだ。

セフィロスは刀を携え立ち上がり月を見上げた。





「ウータイはいいな…平和だ。何より月や星が綺麗に輝く…ミッドガルとは大違いだ」

『セフィロス………また来るといい。今度はゆっくり星でも見よう』

「ああ…」





黒いマントを翻しセフィロスは闇に消えて行った。

彼は迷っている。
振り抜かれる刀の切っ先に微々だがブレがたまにあるからだ。
スバルはそれが心配でならなかった…





トスッ





「おーい俺を無視すんなって!」

『してないって』



背中に抱き着くザックス。
こーいうとこが犬っぽいんだよ。





「つーか、お前等いつからそんな仲良くなった訳?」

『昨日の敵はなんたらってヤツだ』

「Σげッ;なんかムカつきますソレ〜」

『ははっ、拗ねるなよ』

「拗ねてませーん」

『はいはい』





月明かりが照らす夜。
星が瞬き流れ、澄んだ空気が肺を満たす。
ここはこんなにも綺麗で平和で、微かにだが自分の田舎を思い出す。

母さん達元気かな…





『てか…お前、帰ったんじゃないのか?』

「あー…まぁこれは話すと長くなりまして;」

『…その頬の跡は?』

「一喝されました;」




頬に残る腫れた跡。
流石に無惨でかわいそうだから湿布を貼ってやった。

どうやら誰かにうじうじしてるところを一喝されたらしい。





「俺ってさ、一つのことが気になり出したらそのことばかり気にしちゃってさ〜全然仕事にも何にも身が入らない性分でさ。お陰で今回の仕事もズタボロ、んでこれがソレの代償」

『……』

「今回の相方に見事に一喝されちゃいまして、何を迷ってたんだか今じゃバカらしくてさ。俺の中では既に答えは出てたのにな」





月明かりだけが照らし出し薄暗い宵の中。
その空色の瞳が重なる。
その瞳に迷いはなかった。





「俺には迷信とか運命とか難しいことはさっぱりわかんない…けどさ、ただスバルには笑って隣に居てほしい。どんなスバルだってスバルに代わりはないだろ?
スバルはスバル、キッチリとしてる癖に無茶して前しか見えてなくていつも他人の事ばかり考えてる…それがお前」



そうどんな時でも他人の事ばかり。
自分の事は二の次でホントに放っておけない馬鹿。





「好きになっちまったものは好きだからしょうがないし、好きに理由はいらないじゃん?
…あんな形だったけど俺はお前と出会えて変われたし、たくさんの辛い出来事も乗り越えられた。だから次は俺の番」

『……』





抱きしめられた腕の力が強まる。
一度逃がしてしまった後悔を拭い取るかのように…












「俺の声、気持ち、夢…全部、お前にやるよ」









『ザックス…』



「おっと!誇りは譲れなかった…;」






















『夢を抱け、誇りを忘れるな…だろ?』










不適に笑うスバル。
まるで知っていたかのように…





「アンジールに誓ったからな、これだけは譲れない」

『いいよ、…俺はザックスから何も奪おうと思わないしそれを俺も望むから』





少し肌寒い闇の下、二人月を見上げた。





『明日晴れるかな?』

「晴れる!だってザックス・フェアのフェアは晴れって意味だし」

『じゃあ晴れだね(笑』





身体に回された逞しい腕に手を添えどちらからともなく唇を重ねた。













ザックス、キミは光だ。
太陽のような暖かさをもつ希望の光。


きっとキミなら陰鬱なこの汚れた血を浄化してくれるだろうか?


どうかキミは太陽の狼、ハティであって欲しい。













音沙汰もなく暖かな風が吹き抜けた。

それは花の香りを包みユリの花びらを舞い散らしながら…





「これは教会の…」

『エアリス…』





エアリス…
キミにはいつも心配かけてばかりだね…

でも大丈夫だよ

俺達はもう迷わない…



全てを受け入れて前に進んで行くから…





『いつかエアリスに謝りに行かなきゃね…』

「きっと怒られるな;」

『俺達心配させてばかりだからね』





舞い散った花びらを一つ掴みスバルは念じ空へと返した。

エアリスに届くようにと念じて…








"早く3人で空を見よう"





そう願って。



end

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あきゅろす。
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