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27.secret meeting









「一度、アナタと話したかった」






青々と茂る緑林の中。
声をかけた人物は長い髪を翻し冷たい瞳をこちらへ向けた。





「お前は……

 …フンッ…何のようだ?」

「…別に、話しをしてみたかっただけ。
今日は闘うために来たんじゃないよ」





古しえの森、
静かなる神聖な場所。

そこに何故か彼はいた。


お互い重なる視線。

ただ以前と違うのは殺気がお互い無いということ。





「セフィロス…

  アナタは一体何を望んでいる?」

「望み?

 さぁ、わからんな……」






空を見つめる。
しかし、そこには空がなく鬱蒼とした木々が茂り一面を覆っている。
それはまるで誰かの心のように…




「ならば、お前は何を望む…?」

「俺は……

 神羅のない平和な世界が欲しい、かな」

「神羅、か…」





ジェネシスやアンジールのいない今、あの場所が自分の本当の居場所かわからなくなっている。
前は任務任務、仕事が中心でそんなことなどなかった。
よほどあの関係や環境が心地良かったのだろう。

だからこそ、セフィロスは迷っていた。





「俺は物心がついたころには既に神羅にいた…
そしてジェネシスやアンジールと共に闘い、過ごしてきた…」

「……」

「だが今、何の為に任務なんかについているのか、何の為に闘っているのかさえわからない…

俺はどこで生まれ、どこで育ったのか…」

「セフィロス…」





刹那、正宗を振り抜き樹木を切り倒した。
それは心の叫び声のように思えた。

この人は迷っている……

以前僅かであったが刀を交えた時とは立ち振る舞いが異なる。
その振り抜かれた切っ先に微々たる迷いが生まれていた。





「…星の声、アナタは星の声に従うといい」

「星の…声?」





手の平から村正を取り出し切っ先を空へ掲げる。





「星は俺達の進むべき道を導き指し示してくれる。…迷い悩む心、悲しみに暮れる心を慰め癒してくれる…」

「……何故そう思う?」

「…星は語りかけてくるものなんだよ」





切っ先を180度逆へ翳し村正を大地へ突き刺した。





「星はつねに語りかけてくる。そう、いい方にも悪い方にもね」

「……」

「迷うなら迷えセフィロス

この先の行方、その答えはセフィロス…アナタの運命はアナタが決めていいんだ」

「……フンッ」





小さく鼻で笑う声。
それはどこか安堵を交えたような迷いの無き笑み。
スバルは瞼を閉じ村正を体内に納め樹木の突起した根に腰を降ろした。

長身にしてまだ心が出来上がらず不安定な彼。
薄々、感づいてはいたがやはり予想は的中。


セフィロスは正宗を仕舞い静かに地面を見詰めた。





「…何が目的だ?」

「…俺の目的はただ一つ、その正宗を還してもらうこと」

「何故この刀に執着する?」


「そいつは双子なんでね」




「…双子?」





振り返り再び重なる視線。
ソルジャーの瞳はいつ見ても綺麗だ。
中でもセフィロスは他のソルジャーとは異なりエメラルドの輝きがある。





「そう、俺の村正はアナタの正宗と同じ作者が作った番いの品。ウータイの名のある職人の作った名刀、そん所そこらの奴らには簡単には扱えない上に簡単には破壊されない逸品」

「その刀が何故神羅に?」





この刀はプレジデント神羅より特別に支給された刀。
その中から見た目、形、長さ、重さ等の点から選び抜いた物。

ただそれがどういった経路で入手したかは貰い受けた側は何も知らされていない…
大体検討はつくがな。





「この刀はいわば遺作にして最強、よって強靭な力を持つものが所持すれば星をも壊し兼ねない…」

「…お前はあの時俺を狙った理由はそれか?」

「セフィロスが星を壊し兼ねない人物と思ったからな」

「…“英雄”の肩書き、か」





セフィロスはゆっくりと歩み寄り隣に腰をかけた。

一度は本気で刀を交じり合わせた仲。
しかし今こうして隣に座り話しを交えている。


不思議なモノだ……





「…ま、今のアナタからはそいつを還してもらおうとは思わないさ。
だが、もしアナタが星を破滅へと導かんとする時、俺は力付くでも正宗を取り返しに行くよ」

「…そうか」





迷いのない声音。
お互い孤独を知った身。
孤高を彷徨った身。

少し似ているのかもしれないな…



セフィロスはゆっくりと立ち上がり森の入口へと歩む。
今ここで刀を振り抜けば確実に仕留めることはできる。

だが、そんな馬鹿なことはお互いしないと短かな会話の中から読み取ることが出来た。



途中、彼は振り返ることもなく立ち止まり声を放った。





「そういえば…名前を聞いていない…」

「……俺はスバル、
    ウータイの陰陽師だ」

「そうか…   また会おう」

「ああ」





視線を向ければ森の入口にスーツ姿の男が数人立っていた。
恐らく彼は任務中にも関わらず抜けだしここへ来たのだろう。



……何のために?











「エアリス…彼は敵じゃない気がする…

 俺は間違えてるのかな?」





スバルはゆっくりと空を見上げた。


どうか世界の厄災が起こらないことを願って…。




end

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あきゅろす。
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