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18.derange












『PiPiPiPiPi−…

臨界点突破〜臨界点突破。マテリア放出レベルMAX突破、制御不能制御不能…』





バチバチバチッと辺りに稲妻がほとばしる。
物凄い風圧でマテリアを制御している装置が負け、ベコンベコンッと凹み壊れたからだ。
ピシピシとガラスや壁に亀裂が走る。


耐えられるのも時間の問題だ。
風と風の隙間。
それを見極めスバルは腕を振り払った。










ガリガリガリガリガリッ―――…‥バキンッ


カキンッ…カラカラカラ…






マテリアが装置から外れ地面を這う。







「クッ!鎌鼬かッ…しぶといな」

『これでマテリアは使えない。
…悪いけど簡単には、死ねないんでね』






少し焦げた肩をパンパンと叩き身嗜みを整えるとスバルは目を細め宝条を睨む。
凍てつく瞳で。



「ククッ…さすがは私の実験サンプル。面白い、実験のしがいがある…」

『………』

「4つのマスターレベルのマテリアでもダメであったか。カカカッ実にイイ!」



目を手で覆い狂って笑う宝条。

――…狂ってる。

足元をフラフラさせながらも笑いつづける様は不気味としか言えない。



………付き合ってられない。
小さくため息をつき踵を返した。






「………待ちたまえ、君には最高のプレゼントを用意しているんだよ」

『は?』






カシュン…カシュンカシュンカシュンカシュン……

――――ギュイィィィィィイイィイィィ!!!!!!!






突如、壁を突き破り何かデカイ塊が現れた。
二足で歩く鉄の塊、紅い閃光の瞳をギラギラと光らし敵を探している飢えた獣。
両腕の巨大な鋏をジャキジャキと音をたてて振り回している。






ピピピッ……





『随分可愛くないプレゼント』

「紅い瞳がかわいらしいではないか」





ピピピッ……ロック…オン





『…悪趣味だよMr.宝条』

「従順こそがかわいらしさではないか」





…ピピピピピピッ………廃除!!!












『興味ないね』





手の平に力を込める。
体内から村正を呼び起こし刃を向けた。
足場を強く蹴り一気に距離を詰める。
鉄の塊は紅い瞳を一層紅く光らせ、鋏に回転をかけながら振り下ろした。

スバルは瞬時に飛び越え身体を翻し後ろへ回る。
刹那、塊は身体を360℃回転させ鋏を振り払う。
まさかのシステムに表情を変えぬまま咄嗟に身を引き受け身を取った。



『前とかないの?』

「どんな命令にも従順なんでね、私の言葉にすぐ反応してくれる」

『キモい…』



キュインと音を立て鋏の合間からリボルバーが顔をだした。
遠距離ならばマシンガン。
神羅らしい姑息な手だ。

腰の位置を低めにとり、再び詰め寄る。
宙を無数の弾がが飛弾。
それを軽々と避けスバルは一切、両脚を切断した。



『動けなければただの塊だ、これで終だ』



村正を振り抜き両腕を切断。
敵の戦力を奪い取った。

先程まで動き回っていた残骸から飛び降り退く。
呆気ない…



『セフィロスが居ない今、ここには用はない』

「…………ククッ、フハハハハ!」

『…何がおかしい?』



「倒したとでも思っているのかね?」



何を言っているんだ…
目の前には無惨にも手足のない塊。

しかし紅い瞳が消えていない…



まさか…ッ!





「…私は実験サンプルをやすやす逃がすほど馬鹿ではないのでね…
実験以外にもサンプルが逃げないようにいろいろと対策を考えているのだよ」





ガ゙シュンッ…パキパキパキパキッ―





自らの鉄の体内から八つの長細い脚が突き破り激しい音を鳴らしながら身体を作り上げていく。
それはまさに、鉄でできた蜘蛛のよう。



「言っただろう?

コイツは…私に従順でね」





―――ガキンッ

キシュァァァァァァァァァァァ!!!!



無数の牙の生えたグロテスクな口を開け雄叫びを上げる蜘蛛は8本の脚を駆使し物凄い速さで襲い掛かってきた。
スバルは村正を構え直す。

しかし、
突如マテリアを持たずしてマテリア相手に力を解放し既に力が底をつこうとしていた。
脚がよたつく。



(クソッ……!)




























「あんさん俺の主人に何してますのん?」



凛と響く独特な声。
瞬間、メキッと鈍い音が響き蜘蛛は地面にたたき付けられた。
地面には深いクレーター。
無惨にも地面に減り込んで機能が制御出来ず地べたをもがいている。

あ…
気付けば隣にはよたつく身体を支える黒髪の…。



「悪い、遅くなった」

『…、ザックス』



スバルの様子を見、三人は目の色を変え蜘蛛を切り刻み宝条へ投げ付けた。
オイルや細切れの鉄塊が銃弾の速さに勝るほどの速さで宙を舞う。
しかし宝条はそれを難無くかわし、ビル内へと消えていった…。

さすがはその手のプロとでも言えようか。









再び静寂に包まれる空間。

それを破ったのは意外にもザックスであった。




「スバル

神羅から出よう」

『ザックス…?』

「お前はここに居ちゃいけない」

『だがセフィロスを「実験のサンプルにされちまう!」

『!』

「狂ったあんなやつがいる所より他の方法があるだろ?」



トラに肩を捕まれ振り向くと3人とも無言で頷いて答えた。
そうだな、これ以上迷惑はかけられない…
ゆっくりと頷くとザックスは穏やかに微笑みスバルの頭を撫でた。
温かな大きな手で。



「任務からもう時期タークス達が帰って来るはずだから早く逃……行けッ!」



突如視界がぶれる。
ザックスが勢いよく突き飛ばしたからだ。

目を凝らすと見たことのない片翼の生えた人達がたくさん、まるでクローンコピーみたいな奴らが刃を構えている。

ザックスは既に剣を抜き振りかざされた刃を受け止めていた。



「ヒバリ!スバルを連れて扇で飛べ!」

「言われんくてもわかっとるわい!」

「スバル!」

『ザックス!』



マオとトラに押さえ付けられヒバリの扇に乗せられる。
嫌だ、ザックス一人しか居ないのに置いていけない。

ビルのから下も敵の数はうじゃうじゃと沸くようにんどん増えている。



『嫌だッ、ザックス!』

「行けッヒバリ!」



無情にも延ばした手は宙を掴むだけ。
ヒバリは頷くとビルより飛び立った。

必死にもがくスバル。
最期にザックスはニッコリ微笑み言葉を出さず口を動かした。



「スバル!

      」

『……ッ!』



刹那、
ザックスの身体は10を越える敵に薙ぎ払われビルの外へ弾き飛ばされた。

……嘘、だろ?



堕ちていく身体。
助けに身体を乗り出す、しかし運悪くタークスのヘリが現れそれは遮られた。



「チィッ、タイミング最悪や!」

「…逃げるしかない」

『嫌だッザックスがッ!!!』

「スバル…」

『アイツは悪くないんだッ!!アイツはッ…!!!』

「……スバル、ごめん」



ドスッ








……遠退く意識。






なぁ…ザックス


約束したよな……?









「スバル

   ま た な?」


End

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あきゅろす。
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