14.Friend?
『お前いつか捕まるぞ?』
「何に〜?」
『社長に』
「Σ……大丈夫大丈夫〜!;」
あれから毎日、暇があればザックスはここへくるようになっていた。
ミッションもこなしながらなのに、体力が馬鹿なほどあるのか…
「うわっ!」
『…ないのか』
ザックスはよくこけることがわかった。
敢えて口にしないが、
コイツはかなり抜けている…
例えばミッション遂行時間を間違えたり、マテリアを忘れたり財布を盗まれたり……うんぬんかんぬん多々諸々。
『今日は仕事は?』
「なーいー日ー」
『だったら部屋で寝てろよ』
「スバルといた方が楽しいのー」
鉄格子に背中を預け近くで話してくれる。
以前最終セキュリティであるトリカゴの鍵を外そうとしたのだが、ザックスでもできなかった。
「ごめんな、出してやれなくて…」
『別にいい、近々出れるさ…』
「え?」
『そんな気がする』
「勘か?」
『勘だ』
二人噴き出し笑いあった。
ここ数日でスバルは少しずつ感情を出すようになった。
ザックスにはそれが一番嬉しかった。
スバルがゆっくりと近づいてくるのがわかる。
いつもガラス越し、背中を合わせて話すのが日課になっていたから。
『…ザックス、星の声ってわかるか?』
「星の声?」
『うん。星は語るし、泣くの』
「スバルには聞こえるのか?その声が」
『………』
無言。
それは静かなる肯定。
少しずつ開いてくれている彼の心。
たくさん知れたらいい。
そしていつか心の底から笑える日がくればいい、まだ出会って短い時間しかいないけれど、そう思った。
ジェネシスがクローンコピーに成功した。
次に会った時彼の背中には黒い翼が生えていた。
そればかりではない、
体中に変なひび割れが……
―――"劣化"らしい…
人を離れてしまった彼に、
狂ってしまった彼に、
戸惑いを隠せなかった。
そして追い撃ちをかけるように彼の後ろに降り立った片羽の天使。
アンジール……
まさか彼を敵対しなきゃならない日が来るなんて…考えたくもなかった。
『ザックス、無理に笑うお前は嫌いだ』
「何を言っ…」
『心が泣いているから』
「…心がよめるのか?」
『心はよめない、ただそう感じるんだ』
「そうか…
スバルには適わないな」
脚を立て抱え込むとザックスは久しぶりに、
泣いた――…。
俺達は強くなんかない。
強がっているだけなんだ。
本当は弱くて脆い――…
俺達は支え合って生きる生き物。
ソルジャーだからって、
無理して胸を張らなくていい――…
『ザックス、俺は神羅が嫌いだ…だが、お前は好きだ』
「……スバル」
『なぁ、俺とお前は…敵か?』
「違う!!!俺達は友達だッ!!!」
『なら、頼ればいい。
背中くらいいくらでも貸してやる。だから、無理だけはするな…』
「! ……それはお互い様!!」
スバルは強い。
どれだけ重いモノを背負っているかは知らない。
けど独りで担げば重いものだけど、二人で担げば軽くなる。
僅かに感じる背中の温かみに自然と頬が緩んだ。
「スバルがここを出たら一緒に旅がしたいな」
『俺は蒼くて綺麗な空が見てみたい…』
「空…?
ウータイから来るとき見なかったのか?」
『…赤髪が俺の視界の邪魔をした』
「Σぶッ…!」
『ちょ、汚い!;』
「あ、悪い悪い(笑」
そうだな、
二人で何かやりたいな。
二人ならなんでもできる。
そんな気がしたんだ。
end
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