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13.separate





また還ってきたのか――…







冷たい冷たいトリカゴへ



























「なぁ知ってるか?
またコトリがトリカゴに戻ったらしい」

「ははっ、逃げ出したペットがケージに戻ったって訳か」

「ハウスだハウス!」

「つーかコトリってマジでいたのかよ?」

「しらねー」





再び社内が噂に取り巻かれる。

ソルジャールームも例外ではなかった。





「ザックス!…おいおい生きてるか?」

「…カンセル」



ソファーにどかっと座って天井を見ていると馴染み深い顔が覗き込む。
この間あったことに思考が追いつかずザックスは上の空状態であった。

そんな中知らされた人事発令――…



ジェネシス、アンジール…二人の殉職通知。



誰もが目を疑った。
あんな優秀で唯一信頼していた人達の突然の殉職通知。
まぁ死んではいないのは知っているのだが、どうやら神羅側は二人を見放したようだ。

ザックスはでかくため息を吐き頭をかいた。
カンセルは見兼ねて隣に座りザックスの肩を小突く。



「ザックスが悩むとか気持ちワリィ〜!明日槍が降るぜ!?」

「ちょ、酷ッ!」

「俺だって「ザックス!」



襟裳とを捕まれ視線を合わせられる。
魔晄に侵されたその瞳から視線を離すことは許されない。



「確かにアンジールといいコトリといいたくさんのことが一気にあった。つーかありすぎた。
けどよー…クラス1stになったくせになんだよその面は?

…すげー悩むかもしらねぇ、けど自分を見失うなよ。

お前のモットーはなんだったんだっけか?」

「!」









そうだ、
…立ち止まってなんてられない。

アンジールに会って理由を聞き出さなきゃ。

コトリに会ってあの腹部の傷や、なんでセフィロスを襲ったのかを聞き出さなきゃならない。



そうと決まればザックスは立ち上がり顔を両手でおもいっきりバチンッと叩いた。



「そうだな!
俺らしくない…ちょっとそこら辺走ってくるわ!」



数回スクワットをするとザックスはフロア内を数周走るとエレベーターを抜けてジョギングへと走っていった。
そこにはいつも通りの彼がいた。







(本当、世話の焼ける…)


































夕刻―…

俺は上層階へと足を進めていた。

前の騒ぎのこともあり1stの特権もありつつでザックスは上層階への行き来が許可されていた。













―ガガガガガ―――…チンッ














ゆっくりとエレベーターの扉が開く。

するとそこには依然よりも遥かに厳重にされたトリカゴがあった。






「なんだよこれ……」





見たところオートロックが三重になっている。
以前ガラス張りだったトリカゴは上から鉄格子がされていた。
四方にはマテリアが数個。
恐らくマスターレベルまで上げられたものに違いない。





(そんなに逃がしたくないのか?)




取り敢えずその階に降り立ちザックスは一つ目のロックへと手を伸ばした。



(さーて、一つ目は、と…)



恐らく一つ目はソルジャーのクラスカードで開く。

二つ目もなんとか勘で入力し
鍵を開けることに成功した。



「ビンゴ☆」









問題は次らだ。

恐らく何かの暗号、もしくはシリアルナンバーと考えられる。
幾戦の戦場を越えてきたザックスでも今回ばかりは難行していた。


(恐らく間違えたらアウトだな)



この間の出来事を思い出す。















―――――確か、陰陽族?の生き残り、




末裔…



…成る程。














ザックスは迷わず単語を入力した。
するとウィーンと電子的な音を立てて扉が開かれた。



「俺この会社侮ってたわ…;」



マニアック過ぎる。
逃がしたペットが再び戻ってくるとこんなにもセキュリティを付けるなんて。
ゾクッと変に背筋が凍り付いた。

















「さっ、さて;いるかな〜」





恐る恐る中へ歩を進める。

まぁトリカゴは別のロックだから開けられるかわかんないけど…

鉄格子を見つめ
その隙間から見えるガラスから中を伺う。



















『毎回、お前は不法侵入が好きだな?』

「!」








凛と響く独特の声。

俺はこの声を知っている。
目を凝らすとそこには見慣れた姿形。
どこか困った顔をしているのがわかった。





「スバル!傷、大丈夫なのか!?」

『お前な……
それより見つかったらヤバイんじゃないのか?』

「そ・れ・よ・り・傷ッ!」



全く引き下がらない子犬。
仕方がないとスバルは服を開き斬られた跡を見せる。

するとそこには跡形もなくなっていた。



その状態にさすがのザックスも目を見開く。






『俺は…普通の人間ではない』









スバルの眼光は何処か宙をさ迷っていた。










「………違う」

『は?』

「スバルは俺と同じ普通の人間だ」



『何を言っ「確かにっ!

確かに俺も魔晄を浴びて普通じゃないかもしんない…。でも、スバルだってちょっと不思議な力が使えるだけで全然普通の人間とかわらねぇじゃん!」

『!』





ザックスの優しい笑顔。
それに打って変わって強い意志のある言葉。









暖かな…


暖かな風が吹いた気がした…










『ありがとう…』





ガラスへと手を伸ばす、
しかし今回はマテリアに制御されてすり抜けることができない。

ザックスは代わりにその触れた掌の上に重なるように掌を開きガラス越しに重ねた。









「また会えたな」

『あぁ、』





二人の間に柔らかな風が吹き抜けた気がした――…


end

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あきゅろす。
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