[携帯モード] [URL送信]
12.honor










「全体、整列!構え!」










訓練所に響き渡った教官の声。
一般兵達は憧れであるソルジャーになるために日々訓練に明け暮れていた。





「銃はお前達に支給されるのは訓練のみだ、気をつけて扱うように」





訓練用のゴム弾を銃へ装填し的がおいてある訓練用のラインに皆順に列び的を狙う。

その中一際秀でた能力を持った少年がいた。









パアァン………









「お前筋がいいな…、次!ほらグズグズするな!」





指導官が魅入る一般兵を誘導する。
筋がいいと言われた少年は再び列に並ぶ。
しかしジリリリリと機械的な音が遮った。
一般兵達は皆整列し散り散りに部屋へと帰って行った。



もちろん銃は皆支給箱に戻され、少年も迷う事なく箱へ入れ回収。
部屋を出た。












「なぁお前」













目の前には先程の訓練に参加していた一般兵たちが数人。
彼の元へ駆け寄って来た。





「お前すげぇな!?」

「どーやったらあーできるようになるんだ!?」

「え、…あ……別に」



彼等の言葉にオロオロと戸惑う。
数人からいきなり質問されて少年は会話が下手なこともあり、ごめんと謝ると部屋へと戻って行った。



「なんだよアイツ…?」

「……出来るからって…ムカかつく」




























田舎から出て来て数ヶ月。







ソルジャーになるために出てきたのはいいが、まだ俺は一般兵だ。
最初の適正試験でソルジャーにはなれなかった、だからこそ今の下積みを真剣に懸命に取り組んでいる。

けど、唯一苦手なことがある。







"コミュニケーション"――…








もともと人と話したりするのが苦手で、田舎ではそんな支障はなかったがここでは別だ。
基本団体行動である軍での生活は一人でいることはできない。
入隊してから数ヶ月経つというのにお陰で友達も出来ず今に至る。







部屋に戻る途中、
少年は深いため息を吐きながらミッドガルを一望できる展望デッキに寄った。
部屋に戻っても共同生活の空間には変わりない。

少年は手摺りに寄り掛かって外の世界を眺めていた。



















『…ねぇ、キミ。隣いいかな?』

「え?」




気づけば隣に銀髪で青メッシュの入った少年が立っていた。

服装は………一般兵。



見たことのない少年だった。



一番驚いたのは…人見知りの俺が何故かそんなに緊張しなかったこと。


ゆっくりと薄い唇が言葉を紡ぐ。



『君は神羅の一般兵?』

「あ、…うん」

『綺麗な髪だね』



彼の髪は一般兵の中でもかなり目立つ金髪。
確かに珍しいかもしれない。

けど彼もかなり目立つと思う―…




「アンタも一般兵?」

『…今日はね?』

「?」



『――…キミ、純粋な瞳をしてる』





じっと見詰められ少年は恥ずかしくなり顔を反らす。
整った彼の顔が間近にあり人見知りをする方の少年は緊張はしないにしろ赤面した。

それに面白そうに微笑む銀髪の彼。





『ふふ…キミ、気に入ったよ…
名前は?』

「…ク、クラウド。クラウド・ストライフ」

『そっか…今日は会えてよかったよクラウド』

「…アンタ何処の所属なんだ?」

『んー…さあ?』



手摺りから離れくるくると回り悪戯っぽく笑う彼。
クラウドは訳がわからないと眉を潜めた。

まぁ無理もない。
だって、…





『俺は上にいるよ、クラウド。
キミとならまた会えるだろう…』

「アンタ…『…ッ、と!』

「!?」




いきなり引き寄せられ振り返るように彼は何かを蹴り落とした。
地面を見ると先程訓練で使っていたゴム弾。





『ハンッ、ここは訓練所ではないのだが…?』



視線の先には先程話し掛けてきた奴らの中の一人。

回収されたであろう銃が握り締められていた。



『優等生は気に入らないってか…』

「………ッ!」

『汚い心は嫌いだ…』



銀髪の少年は右手を振り抜くと共に遠隔にいた彼の銃が真っ二つになっていた。
途端、彼は顔が青ざめその場から逃げるように離れて行った。











『クラウド、強くなれ…』








「えっ?」

『キミはどうやら…、




…時間だ。

また…ここで話そう』





彼は手摺りの上へ飛び立つ。
次の瞬間、振り返り背中から後ろへ倒れ

――――堕ちた。






「え…




待てよ!アンタッ…!」





急いで手摺りへ近づき下を覗き込む。

しかしそこには誰も、何もなかった―――



ただ一枚の花びらのみがゆらゆらと舞い落ちる姿のみを残して。


















「誰…………だったんだ?」




end

[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!