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11.falseness












「バカリンゴって知っているか?」





















確か、あの時アンジールが樹木を指差し俺に問い掛けたんだ―…。










ここはバノーラ。
自然が生い茂り小鳥の囀りが聞こえてくる長閑な田舎だ。


空気も美味いし昼寝には最高!


――…なのに隣にはお固いスーツ姿の人物が一人。











「一年中花を咲かせ身を実らせる、通称バカリンゴ。ソルジャーなら知っていて当たり前だろ?」

「わーってますよ〜。固いなツォンさんは」







スーツと兵士。
一見不似合いな組み合わせだ。

なぜこんな組み合わせになったのかというと、クラス1stの不在。
そして今回ここに来たのは他でもない理由、戦友であるアンジールが"謎の失踪"を遂げたからである。





村の入口に着くとアーチ状の樹木が、バカリンゴの木が道沿いに生え出迎えてくれた。





「…ついたぞ」

「ちょ、いきなりお墓がお出迎えですか;」





村の入口。
そこには嫌でも目につく不自然に盛り上がった土、その上に厳かとは言えないが石が乗せられていた。





「まだ新しいな…」





するとツォンは墓を掘り出した。

さすがのザックスも驚きを隠せず後ずさる。





「ザックス、君は村の探索を頼む」

「そうさせてもらう;」





タークスの仕事の話しは聞いていたが、こう目の当たりにするのは初めてだ。
ザックスはすぐに死人調査を受け渡した。





































『悩み唄え あの旋律を

希え 忘却の旋律 … うたかたの願を』

























突如響き渡る声。







辺りに火の粉が舞い散った。








「わっちちちち!;」





ザックスはなんとか避ける。
さすが、日頃の訓練の賜物だろう。


火の粉を舞い散らせた張本人、
赤のコートを身に纏う男がバカリンゴの上に佇んでいた。














――失踪した人物










――ソルジャー・クラス1st ジェネシス























「ジェネシス!
アンタどうしてここにいるんだよ!?」

「さぁな。

ほう…子犬のザックスか。成る程、よく吠える」

「なッ…!?」

「…悪いがここへお前を入れる訳にはいけない…」

「ちょっと、なんだよそれ?」





意味のわからない返しに眉を潜める。
そういえばアンジールの探索の途中であることを思い出した。



「そだ!なぁ、ジェネシス。アンジールがどこにいるか知らないか?」

「……LOVELESS」

「は?」

「今のお前のせいで序章が変わってしまった…」

「おい、ジェネシス!
質問に答えろよ!」





右手を左肩へと翳し一気に振りぬくとファイガが唱えられる。

ザックスは瞬時に避け受け身をとる。





「ちょ、意味わかんないし!
だいたいそんな恋愛物語りになんでこれとそれが関係するんだ!?」

「さぁ?自分に聞いてみろ!」





ジェネシスはガンブレードを抜きザックスへと襲い掛かった。






――ガキィィィィィィィン!!!!






激しい剣の混じり合いに火の粉がほとばしる。




「ジェネシス!
アンタどうしちまったんだよ!?」

「別にどうもしていないさ。
ただ運命がそうさせているんだ」





ギンギンと激しくぶつかる鋼。
力は圧倒的にこちらの方が不利だ。

ザックスは力を緩め身を引き瞬時に懐へ入り腹部へと頭突きを食らわせた。





「グッ……!」

「…ッ、少しは効いたかよポエマーさん?」





若干息の上がったザックスに対しジェネシスは一瞬腹部へと手を添える。
息など上がってはいない。
彼は再び体制を整えるとニヤリと不気味に微笑んだ。





「我 時誘う覇者となれ…
君のお陰で運命は不協和音を奏で始めたようだ」

「…?…あ、アンジール!」





村の中、一軒の家の前。
見慣れた姿の成年が立っていた。
それは紛れも無く捜していた彼。
急いで歩み寄り無事を確認した、が…







「なん、だよこれ…」








飛び散った鮮やかな紅。
しなやかに横たえる身体。
綺麗に咲いた紅い華。
彼の手に握られたバスターソード。
床に堕ち割れたガラスに埋もれた幼い頃の写真。





「アンジール…?
これがッ、…これがアンタの答えか!?」





胸倉を掴み問う。
違う、俺じゃないと否定してくれることを願って。

しかし、そんな身勝手な言葉は闇へと堕ちていった。





「アンジール?なぁアンジール!?」















「………アンジール」














背後からかかった声。
それは嫌に鮮明で憎らしかった。





「もうここには用はない、行こう」












「………ああ」














突如周りに光りが立ち込め、気づけば……


二人の姿はもうそこにはなかった…。






























――――……ピリリリリッ




















「……はい、ザックス」

『ツォンだ。この村はもう死んだ。我社のやり方でこの村は"消す"ことになった。あと一分後、空爆を開始する』











ピッ………







ツー…ツー…ツー…

















「アンジール…どうしちまったんだよ…」



























一分後、
バノーラという村は地図から消えた。






























ピリリリリッ………
















subject:人事発令0104/神羅ニュース
――――――――――――――――――

本日をもって下記のとおり
人事発令を実施する。


ソルジャー・クラス1st ザックス






以上。


end

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あきゅろす。
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