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elegy


「飽きた」
ぽつりと呟かれた言葉があまりに唐突すぎて俺は一瞬何を言われたのか解らなかった。
「俺もー帰るわ」
早々と身支度を整える山本にやっと違和感を覚えて、俺は口を開いた。
「…な、に言って」
「んー?だから飽きたって」
お前、といつもの笑顔で髪をくしゃっと撫でられた。
何が、え、何だ。
これは。

「じゃーな」
そう言ってうちのドアノブを握る山本の服を掴んだ。腰が、痛い。
「てめ、どういうことだ」
痛みで顔を上げられない。いや、今は見れなくていいのかもしれない。
「さっきから言ってんじゃん。飽きたんだって。お前のこともう嫌いなわけ」

「だから、離せよ」

俺が手を離したのと、山本が出ていったのは恐らく同時だったと思う。



嫌い、飽きた?

いつ、なんで。だって俺達は付き合ってて、喧嘩もしたけど、それなりに幸せで、
この世に生まれた意味さえ見出した。

なのに、なぜ。

今までが嘘だった?あの笑顔が声が、すべてが偽りだった?

さっきまでだって馬鹿みたいに幸せで、あいしてるなんて恥ずかしい言葉を何回も言い合って、体を重ねて、まだ、奴の熱が体中を駆け巡っている。

飽きた

あいしてる

嫌いになった

あいしてる


木霊する声に耳を塞いだ。












その日の夜
山本は死んだ。












elegy



(流れ出たのは、どちらの涙か)

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