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我が儘

なぁ、お前はきっとすげぇメジャーリーガーになって何億もの金を稼いで綺麗な奥さんと結婚するんだろう。子供も何人も生まれて、そしてお前はイタリアへ家族旅行に来るんだ。友達がいるんだ、とか新しい家族に喋りながら。それで俺に会ったら言うんだろう。まだマフィアごっこなんてやってんのか?って。

「お前は残れ」
「さっきからなに言ってんのか全然わかんねーんだけど」

行き交うひとがこちらを見ているがそんなものは気にならなかった。目の前の問題の方が何倍も重要だからだ。

ひとの波にアナウンスがかけられて、刻一刻と俺達の時間を食いつぶしていく。

「っだから、お前はこっちにくるな!」
焦って出した声は怒鳴っているように聞こえたが、そんなのはどうでもいい。むしろそう聞こえているのなら幸いだ。
「だから、なんでだよ」
帰ってきた言葉の強さに思わずこっちがたじろぐ。だが、こいつの言っていることは正しいんだ。さっきから理由も言わずに俺は残れと繰り返していた。


「なんだよ、残れって。なんで止めんだよ」
こいつの言いたいことはわかる。だって俺達は何ヶ月も前からこの日を待っていた。

イタリアに、行く日を。


「ふたりであっちに行ってツナを支えてやろうって言ったじゃんかよ」

でも、俺は、

「…だめだ」
「獄寺!」
両肩が掴まれて体が正面を向く。

足下を視線がぐるぐると回る。すぐそこにある顔をみるのがこわい。

「…だめ、なんだよ」

押しつけだ、全部。


だめだ、泣くな。



そう、俺の我が儘だ。

アナウンスが響く。

「ごくでら」



「俺さ、生まれてお前に会えたことが一番幸せだと思ってる」

「俺、他の誰とでもなくて獄寺といたいよ」

声がでなくて、山本に抱きしめられているのだとわかった。

「守りたい、」
それじゃだめ?
背中の方で聞こえたその声はぐわんぐわんと俺の全身に溶けていった。

でも俺はマフィアを、沢田さんを選んだから。お前が選んでくれたときも嬉しかった。でも、

でも

「さよなら」

トン、と両手で胸を押した。
重かった。

できるだけ、笑った。

笑えている自信はない。だって目の前の奴が傷ついた顔をしている。

「元気で、な」

それだけ言って俺は走った。

ぶつかるひとなど気にも止めず、ただ走った。

俺は最後の我が儘を押しつけてきた。

あいしてる、なぁ、本当はすごくすきでたまらない。愛しくていとしくて気違いのように想ってる。

おまえがすきだから、いとしいから、しあわせになって。




だから、さよなら










我が儘

(結局は俺のエゴだとしても)

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あきゅろす。
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