so white 「そこに、いますよね…?」 伸ばした手を暖かさが包んだ。 「いるよ、ちゃんと」 暖かさは上に上に移動して、触れた先はとくん、と小さく動いた。 とくん、とくん、 規則正しいリズムに安堵する。生きてる。あなたはここにいる。ちゃんとオレの前で呼吸をしている。 「慎吾さん、」 「ん」 「ちゃんと生きてるんですね」 何気なく言ったつもりだった。でも暖かさは震えていて、かすかに声を押さえていた。 「わ、笑わないでください」 「ごめんごめん…っだって、生きてるって…ぷはっ」 あなたはまたいつもみたいに遠慮なしに笑っているのだろう。震えている肩はまだカクカクと。 「……だって、思ったんですよ、生きてるって」 こんな音だけで、感覚だけであなたがオレが生きているという証拠がある。手がそれを伝えてくれる。安心する。 改めて、そういう言葉で表すべきだった。震える感覚に、まだ笑ってるんですか、と抗議をする。 「当たり前だろ、俺達はちゃんとこの地面に足着けてこうして喋ってるんだ」 暖かさが頭をなでた 「生きてないわけがない」 暖かさがなにより証拠だった。近くで聞こえる声はただただ生を知らせていた。近くのあなたの命を教えていた。 「そうですね」 あなたが生きてる、オレも息を吸って同じ音を鳴らしてる。 ぽたん、と腕に何かが落ちた。 雨かな、と上を見上げても、それは白に溶けていった。 so white (白い暗闇であなたの音を聴きました) [return][next] |